イタリア・オペラ・アカデミー
巨匠に学ぶ濃密な8日間に密着
「この一音に込められた意味を学んでほしい」
「ヴェルディの楽譜を精確に解釈し伝えることは自分の使命」という巨匠ムーティ氏の意志により、地元イタリア・ラヴェンナに続き、2019年東京・春・音楽祭において「イタリア・オペラ・アカデミーin東京」が初開催されました。
今年のテーマはヴェルディのオペラ『リゴレット』。ヴィクトール・ユゴーの戯曲『王は愉しむ』を原作として、悲劇の道化師リゴレットを主人公にした作品です。
アカデミーは指揮受講生のオーディションから始まり、一般向けの作品解説、指揮・歌唱・オーケストラ指導、公開リハーサル、そしてコンサートと充実した内容に。
特にリハーサルでの、たった一つの音にも妥協を許さない巨匠の姿は圧巻。情景にふさわしい正しい音が鳴るまで、時にジョークも織り混ぜながら言葉をつくして説明し、若き音楽家たちを高みに導きます。
【1日目】指揮受講生オーディション
27か国129名の応募者から、2度の選考を経て4名の受講生が選抜され(うち1名は日本人の沖澤のどかさん)、約1週間にわたりマエストロの薫陶を受けました。受講生たちは、お互いに顔見知りだったようで、最初から友好的な雰囲気でした。
【1日目夜】リッカルド・ムーティによる『リゴレット』作品解説
作品が生まれた歴史的背景、道化師リゴレットの苦脳から喜びへの変化を表す和声、愛に生きる娘ジルダの表現、曲全体に流れる呪いの一音「ド」の効果など、オペラの世界に深く誘ってくれました。
マエストロのそっと寄り添うようなピアノの伴奏でアリアや四重唱も披露。上野・東京文化会館の大ホールにて開催。
【2~7日目】公開リハーサルにて 指揮者・声楽家への指導
指揮受講生が順繰りに指揮台に立ち、傍らでマエストロが指導。愛、呪い、恐れなどの感情表現、ハーモニーの変化や転調の意味、言葉に含まれる暗示などを細かく追求しました。マエストロによるお手本の指揮では、背中からこの曲のすごみが伝わってくるほど。
【8日目】コンサート『リゴレット』
指揮:リッカルド・ムーティ
©東京・春・音楽祭実行委員会/青柳 聡、飯田耕治緩むことないテンポ、過度なアクート(超高音)のない歌、さまざまな意味を含む静寂や沈黙の効果などで、全体の骨格が明確に。ヴェルディのストーリーテリングの素晴らしさが浮き彫りになった演奏に拍手喝采! 最後には4人の指揮受講生への修了証授与式も。
巨匠(マエストロ)ムーティの注目ポイントは?
ヴェルディの歌劇『リゴレット』
「これは世界のどこにでもいる、父と娘の愛の物語なのです」
好色で道楽者の公爵に仕える道化師リゴレットは、公爵の誘惑に応じる伯爵夫人を嘲笑しますが、彼女の父に呪いの言葉をかけられます。
一方、リゴレットの美しい一人娘ジルダは貧乏学生に扮した公爵に誘惑されて深い仲に。激怒したリゴレットは殺し屋を雇いますが、公爵の身代わりとなった娘を誤って刺すという悲劇が待ち受けます。
「娘に対する父の深い愛が
pp(ピアニッシモ)で歌われる点がリアルな感情表現となっています。そして、全曲を通して渦巻きのように呪いを表した『ド』の音。ぜひ探しながら聴いてみてください」。