——菊地さんは映像がお好きではないそうですが……。
「映像の依頼はこれまでもあったみたいなんですが、基本的にお断りされているみたいです。ただ、映画公開のコメントで、最初に菊地さんから“僕は映像が嫌いです”って言われて意気消沈して帰ってきた、って私が書いたことを、菊地さんが若干気にしてらして(笑)。そういうことじゃないんだよ、みたいなことをおっしゃってました。映像不感症だって。その言い方もどうなんだろうって思いますけど(笑)、“文学に比べて、僕には情報が多すぎる”と」
——そんな菊地さんをどうやって口説いたんですか?
「口説けた記憶がなくて(笑)。最初はほとんど断られた気分になっていたんです。映像は基本的にはやらないし、あまり興味を持っていないというようなニュアンスで、もう一度考えてきたら? 1か月後に少し時間があるから、また会いましょうみたいな感じだったので。それが、次に会ったときにはもう“いいこと考えたんだよ。ここにカメラを取り付けたらどうか”みたいなことを言い出していて(笑)。全然別のテンションだったんですね。一度は断ったように見せながら、恐らくそこから触発されて、いろいろ考えて、どちらかというと演出サイドの気持ちになっていたことにすごく驚いて。この人、相当厄介だぞと思いました(笑)」
菊地さんの装幀は、「一冊一冊の個性を大切にしていて、本というものの本質を捉え直そうとしているところが一番の魅力」と広瀬監督。