広瀬監督に今後を聞くと、フィクションを軸に「撮りたい人が現れたらドキュメンタリーを撮ることもありうると思う」という答えが。——この映画によって、本の見方が変わり、手に取ったときにもっとカバーを見るようになる気もします。そして、本屋に行きたいなと思いました。
「そう思ってもらえるとうれしいですね。(本作が)言葉ってなんだろう、本ってなんだろうってことを考え直すきっかけになるといいなと思っていて。SNSで簡単に発信できて、簡単に拡散できてっていう時代に、やっぱり言葉っていうのを紙でじっくり1日なり1週間なり1か月なり、時間をかけて読む、味わうっていうことを、もう一度見つめ直す時期にきてるんじゃないかなと思います」
——本作にも、本のような仕掛けがいろいろとありますね。例えば、ナレーションではなくテロップだったり、章立てされていたり、エンドクレジットの背景が全部種類の違う紙だったり。
「やっぱり本を模したものにはしようと思っていました。背景にした紙は、最初は全部替えようとは思ってなかったんですけど、紙を背景にクレジットしていこうと思って(菊地さんの弟子である)水戸部(功)さんに相談したら、紙にもいろいろな種類があるから、単に白い紙でも素材感が出ると面白いんじゃないかというふうに提案してくださって。紙を映してみて、紙と文字の個性一つひとつがかわいいなぁと、しみじみ感じていました」
——最後にこれから映画をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。
「本には、まったく気がつかないような、すごく細かな仕掛けがたくさんあるんですね。どういう紙を使って、どういう文字組をしていて、なぜそれぐらい間隔が空いていて、どれぐらい詰めたタイポグラフィーにしているのか……。そういうところも含めて、本を手に取って、触って確かめてみてもらえるとうれしいです」
広瀬奈々子/Nanako Hirose
映画監督
1987年生まれ、神奈川県出身。武蔵野美術大学卒業後、是枝裕和監督・西川美和監督を中心に、映像作品の企画・制作・プロデュースなどを行う分福に2011年より所属。映画『そして父になる』、『海街diary』、『海よりもまだ深く』、『永い言い訳』、ドラマ『ゴーイング・マイ・ホーム』などに監督助手として携わった。19年、映画『夜明け』で監督デビューを果たす。
『つつんで、ひらいて』
監督・編集・撮影:広瀬奈々子
配給:マジックアワー
12月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
公式サイト
https://www.magichour.co.jp/tsutsunde/Ⓒ2019「つつんで、ひらいて」製作委員会 取材・文・構成/西川敦子