ラグビー日本代表が教えてくれた「可能性」
ワールドカップが始まる前、失礼ながら、僕は日本代表がここまで勝つとは思っていませんでした。ラグビーは、選手同士が接触するコンタクトスポーツで、体格がものをいう部分が大きい。だから、身長や体重で大きく上回る海外チームにはかなわないだろうと正直思っていたのです。実際、日本代表は長年、一勝を挙げるのにも苦戦していました。
躍進の理由は、1995年のワールドカップでニュージーランドに145対17という大敗を喫したあと、選手たちや関係者が本気で改革に乗り出したからだと聞いています。海外から実績のあるコーチを招聘し、外国出身の選手の数を増やし、猛練習を積み重ね、力をつけていきました。今大会、7か国の選手たちからなる多国籍チームが一つになれたのは、彼らが「世界一」と言い切る練習量をともに乗り越えたこと、そして「One Team」というスローガンのおかげではないでしょうか。
日本はプール戦で強豪のアイルランド、スコットランドを倒して4戦全勝で勝ち抜き、目標としていたベスト8入りを達成。決勝トーナメントで対戦した南アフリカは、日本が2015年のワールドカップで歴史的勝利を治めたチームでしたが、残念ながら今回は完敗。それでも前半は、優勝チーム相手に「もしかしたら」と思わせてくれる戦いぶりでした。
ラグビーの日本代表チームが僕らにもたらしてくれたもの。それは、自分たちの可能性を信じる心です。彼らの戦いを思い出すとき、厳しい試合に臨むオリンピック・パラリンピックの選手たちも、「自分にもできる!」「やってやるぞ!」と勇気が湧くし、応援する僕たちも選手たちの可能性を信じることができると思うのです。
今回のワールドカップは台風で試合が中止になるという残念なこともありましたが、閉幕した今、海外の選手やコーチ、記者から「過去最高の大会」と絶賛されています。このことで日本が得たのは、大きな自信です。来年の東京2020大会に向けて、自信をもって、One Teamで進んでいきましょう!
コラムの締めは毎回、僕のメッセージを凝縮した一文字の書。“心”がすべての根っこにある!という思いをもとに書いています。第8回は「ノーサイド心」。敵味方なく拍手を送るノーサイドの精神を東京2020大会でも発揮しましょう! 松岡 修造 SHUZO MATSUOKA
1967年東京都生まれ。86年にプロテニス選手に。95年ウィンブルドンでベスト8入りを果たすなど世界で活躍。現在は日本テニス協会理事兼強化本部副本部長として、ジュニア選手の育成とテニス界の発展に尽力する一方、テレビ朝日『報道ステーション』、同『TOKYO応援宣言』、フジテレビ『くいしん坊!万才』などに出演中。近著に日めくり『まいにち、新・修造!』。東京2020オリンピック日本代表選手団公式応援団長としても活動中。
公式サイト>> 撮影/鍋島徳恭 スタイリング/中原正登〈FOURTEEN〉 ヘア&メイク/井草真理子〈APREA〉 取材・文/清水千佳子 衣装協力/KONAKA