高齢者の栄養状態をみた食事指導が必要
佐々木さんが「人生の質を左右する」と重要視しているのが患者の栄養状態です。
加齢によって食が細くなり、運動量が落ちると、低栄養、サルコペニア(筋肉の量が減り、転倒などの危険性が高まる)、フレイル(全身の虚弱)が起こりやすくなります。
高齢者の緊急入院の原因はそのおよそ半分が肺炎や骨折で、背景には低栄養、筋量の減少、筋肉の脆弱性があるのです(下のグラフ参照)。
「全身の筋肉が衰えると喉の筋肉も衰え、誤嚥性肺炎の引き金になります」。
対象患者数755人。出典:佐々木 淳,林 裕子/緊急入院させないための在宅リハビリテーション栄養/メディカル・アライアンス 2015年4月号(Vol.1No.1) 学研メディカル秀潤社低栄養や筋量減少が肺炎と骨折の背景にある
対象患者数755人中、骨折と肺炎の合計の305人の分析。出典は同上一方で、若い世代は生活習慣病の予防や治療のために食事の量や内容の制限が必要になることがよくあります。
「肥満度を示すBMI(体重㎏÷身長mの2乗)は22が標準とされていますが、高齢者では男性27〜29、女性23〜24とやや肥満のほうが長生きすることが知られています。また、高齢になると若いときと同じ量のたんぱく質を摂っても筋肉合成量はかなり落ちます。年齢に応じてしっかり食べる方向にうまくスライドしていくことが大切です」と佐々木さん(下図)。
「ただ食事や栄養の指導は医師の専門ではありません。これからは訪問診療にも栄養士の役割が重要です」。
加齢によって医療の目的は変わっていく
出典:佐々木 淳さん作成資料などを編集部で改変