入院や外来で行われてきた検査や治療を在宅で
現在、従来であれば入院や外来で行われていた検査や治療が在宅でもできるようになってきています。
佐々木さんは「すべてのケースで実施できるわけではありませんが、抗がん剤の点滴、体表面の形成外科的な手術、痛みを止める神経ブロック注射、輸血などさまざまな治療を在宅で行っています。
また、感染症による発熱などでは家や施設の一室をミニICUのようにして点滴や酸素吸入を受けてもらい、看護師が毎日訪問して様子を見ることもあります」。
医療者のスキルアップや医療機器の小型化・ポータブル化などによって、在宅での検査や治療の幅はさらに広がると予測されます。
一方、佐々木さんが現在の在宅医療に不足していると考える分野の1つが、慢性期のリハビリテーションです。
「脳卒中や心筋梗塞、骨折の後、一定期間は公的医療保険でリハビリを行えますが、その後の医療サービスがあまりありません。
筋力アップは人手をかけずにロボットなどのテクノロジーを使う方法もある。いずれにせよ患者さんが生活を取り戻すために理学療法士や作業療法士が支援するシステムが必要です」。
また、在宅医療を評価する仕組みを整えることも大切です。
「在宅での看取り率、救急搬送や緊急入院を回避できた割合などを指標として評価することで、在宅医療の質を上げられます。限りある医療のリソースの削減にも役立つはずです」。
佐々木さんが期待するのは高齢者の意欲を受け止め、それを支えるコミュニティです。
「仕事がある、友人がいる、ボランティアをしているなど社会とつながりがあると健康寿命が延びることが知られています。病気や障害があっても、そういうつながりを作れるように応援していく在宅医療をこれからも目指したいと思います」。