自分のアイディアが出てきた瞬間から楽しくなった活弁
クランクインまでの4か月、そしてインしてからの3か月間、「毎日練習していました」というのは、活弁のこと。成田さんは、「ゼロの状態から始めているので、わけがわからない。“やって”と言われてもできない。節だったり言い回しだったり、独特のリズムがあって、それをもっと濃くしてっていう意味で“もうちょっと濃く、濃く”ってプロデューサーさんや、(師事していた活動弁士の)坂本頼光先生に言われる。言ってることは理解できるけど、でもできないんです」と大変な思いをしながら稽古を重ねました。
ひたすら反復練習をする中で、転機が訪れます。「師匠がやる、僕がマネをしてやるっていう日々だったんですけど、ある日、僕の活弁を聞いた先生から“こうしてほしい”って言われたときに、僕の中で別のアイディアが浮かんだんです」。その瞬間から楽しくなったのだそうで、最初からずっと練習をしていた、活弁をつける作品『火車お千』を「完ペキに理解できて、僕だったら(登場人物の)清十郎のここはこうだなっていう、自分のアイディアが出てきて。自分の活弁を手にした、師匠の教えからちょっとはみ出てオリジナル化した瞬間です」。
「俊太郎が自分の活弁を探すということがテーマとしてあって。僕自身もそうで、自分の活弁を手にしたいと思いながらの日々でした」