すまし仕立てから、あん餅入りまで。土井善晴さんに教わるお雑煮のレシピ

【雑煮鍋】

お餅の清らかさ——
受け継ぐ雑煮、取り分ける雑煮

「力任せにつくとコシがなくなるんです。いいお餅は、もち米、水加減、蒸し加減、つき加減で決まる。これがなかなか難しい」と土井さん。


みるみるうちに艶々（つやつや）と、まぶしいほどに白く輝いて、お餅がつき上がります。

「もち米をつき殺すんです。臼の中で、新しい命が蘇る。それがお餅です」



上・【鶏肉のすまし雑煮】黒内朱塗 祝椀　下・【あん餅雑煮】白檀 日月椀（ともに和田瑾斎 作）／創作漆器 瑾斎

邪気を屠（ほふ）り生気を蘇生させるお屠蘇同様に、餅にも正月の再生の意味が込められています。

土井さんはお雑煮の雑の意味も考え続けており、日本人の生活リズムを唱えた柳田國男のハレ（晴れ）とケ（褻）の思想、日常の総体がお雑煮に込められるといいます。



つきたての餅をのし板に取り、粒あんを芯にして包みます。つきたてのお餅は格別。土井家は餅つきなしでは、正月がこないという。

あん餅雑煮は、土井さんの父・勝さんの出身地、高松の故郷雑煮。関東の切り餅と関西の丸餅、すまし仕立てと白味噌仕立て。風土の違いに、日本の暮らしが重なります。

お正月ですから、海老、はまぐり、焼きあなごというご馳走の具を用意して、お餅も一緒に入れて鍋仕立てにします。これをお椀に取り分ければ、お雑煮です。

「どうぞ、お代わりなさってください」。

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●雑煮鍋

【材料（2人分。土鍋内径約24センチ）】

・餅　4個
・鶏もも肉　100グラム
・豚バラ肉　80グラム
・焼きあなご　2尾
・はまぐり　4個
・車海老　2尾
・白菜　300グラム
・きぬさや　30グラム
・油揚げ　1枚
・金時にんじん（1センチ厚さの輪切り）　4個
・鍋だし　3カップ
・レモン　適宜
【鍋だし（でき上がり量約7と1/2カップ）】
・水8カップ
・薄口醬油　1/2カップ
・みりん　1/4カップ
・昆布（10センチ）　1枚
・さば節　25グラム
・かつお節　15グラム

【作り方】

（1）鶏もも肉は一口大に、豚バラ肉は食べやすい大きさに切る。焼きあなごは頭を取って4等分にする。はまぐりはよく洗う。車海老は洗って背わたを取る。白菜は4～5センチ幅に切り、軸はせん切りにする。きぬさやはへたと筋を取り、ゆでて水にとる。油揚げは短冊切りに、金時にんじんは下ゆでする。餅は半分に切る。

（2）だし汁の材料をすべて鍋に入れて火にかける。ひと煮立ちしたらあくを取り、5分ほど煮てこす。ボウルに移して冷ましておく。

（3）鍋に（1）の材料をすべて入れ、（2）のだし汁3カップを注いで火にかける。あくを取りながら煮て、火が通ったものからだし汁とともに取り分け、レモン汁をかけていただく。

●鶏肉のすまし雑煮

【材料（4人分）】

・角餅　4個
・鶏もも肉　160グラム
・かまぼこ　8枚
・三つ葉、黄柚子　各適宜
・だし　4カップ
・薄口醬油　小さじ1
・塩　小さじ1

【作り方】

（1）鶏肉は一口大に切る。三つ葉はゆでて2～3本で結ぶ。黄柚子の皮は松葉に切る。

（2）鍋にだしを入れ、（1）の鶏肉、かまぼこを入れて火にかけ、静かに2分ほど煮たら、薄口醬油、塩で味をととのえる。

（3）角餅は熱した焼き網にのせ、中まで火が通るようこんがりと焼き目をつける。

（4）（3）の餅を椀の真ん中に盛り、鶏肉、三つ葉、かまぼこ、黄柚子を彩りよく添える。最後に（2）のだし汁をはる。

●あん餅雑煮

【材料（4人分）】

・あん餅　4個
・だいこん、金時にんじん　各適宜
・昆布だし　3カップ
・白味噌（雑煮味噌）　160グラム
・青のり　適宜

【作り方】

（1）だいこん、金時にんじんは皮をむいて5ミリ厚さの輪切りにし、柔らかくなるまで下ゆでする。

（2）鍋に昆布だしを入れて温め、白味噌を溶き入れる。

（3）別鍋に湯を沸かし、あん餅を入れて柔らかくゆでる。

（4）椀の底に（1）のだいこんの輪切りを1枚敷き、その上に（3）のあん餅をのせる。だいこんと金時にんじんを飾って（2）を注ぎ、青のりをとめる。