——最初に本作の脚本を書き始めたのが2000年代半ばだったとか。当時の出版業界のデジタル化は、今とは異なる状況でした。時間をおいて再び脚本に取りかかったことが作品に与えた影響は大きいですか?
「たしかにこの作品のルーツをいえば、かなり昔なんですけれども、それは結果として映画にはならず、脚本に関しては何度も何度も読み返してきたんですけれども、最初はもっとドラマチックだったんですね。でも、読み返したときに、自分が入っていけないというか、感情移入できないし、違和感があるんです。そこで考えたのは、僕自身が変わったんだと。それなら、意識的な部分も言動も、大きなまとまり自体も作り変えなければいけないなというところで作り変えたのが今作という感じです」
——出版業界だけでなく、映画業界もデジタル化されています。例えば、フィルムがデジタルになったり。
「映画業界におけるデジタル化は、電子書籍に比べればずっと前からで。私自身もその変化を経験してきましたけれども、デジタル化されたとはいえ、やっぱりシナリオは書かなきゃいけないし、役者を使わなきゃいけないし、カメラのレンズは必要だし、デジタル上映であろうがフィルム上映であろうが、映画館で観るという状態は残っていて。それでも、私から見れば映画業界のデジタル化は、すでに成された過去のものなんですね。一方で本というのはまだ途上。電子書籍が完璧に席巻しているわけではないですよね」
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