——前作『パーソナル・ショッパー』でも、インターネットの世界と対峙していますが……。
「本作とは、アプローチというかアングルが違います。人間の無意識の延長であったり、人間の記憶の延長であったり、人間の本能の延長であったりするのが、インターネットの世界だと僕自身は思うんです。それをメタフィジカルな形で取り入れているのが『パーソナル・ショッパー』だとしたら、デジタル化ということがある中で、本当に価値はあるんだろうか、続くんだろうかと疑問を提示しているのが『冬時間のパリ』だと思います」
——本作に登場する2組の夫婦、アランとセレナ、レオナール(ヴァンサン・マケーニュ)とヴァレリー(ノラ・ハムザウェイ)。その中で、セレナはレオナールと、アランは同じ出版社に勤めるデジタル担当・ロール(クリスタ・テレ)と不倫関係にあります。夫婦のうち1組は浮気を告白した上で、もう1組は波風を立てずに関係を修復。とても対照的です。
「世界中のカップル、どの時代にもこういうパターンはあると思いますが、模範を提示したわけではなくて。男女間では、愛というものは年齢を重ねるにつれて、それぞれの時期によって変容していくものですよね。だから、夫婦を存続したいと思うのであれば、愛は少しずつ変わっていくものなんだということを双方が受け入れなければ」
セレナはアランの友人で作家のレオナールと6年にわたって不倫中だが……。ジュリエット・ビノシュがセレナを魅力的に演じている。