エンターテインメント

片渕須直監督に聞く、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

2019.12.19

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——原作も映画も、今と変わらない日々の生活が丁寧に描かれています。


「ちょっと考えたんですけど、玉音放送って正午からですよね。あの日の昼ごはんをみんなどうしたのか、すごく気になって。食べてないんじゃないかと思うでしょ? じゃあ、晩ごはんは? 食べないと次の日、もたないですよね。8月15日だって、ちゃんとごはん食べてるんですよ」

——戦争ものといわれる作品は多々ありますが、生活を描いていないと15日の食事をどうしたかということは出てこないですよね。


「唯一観たのは、(連続テレビ小説)『カーネーション』。玉音放送を聞いたあと、“さ、お昼にしよ”って言うんですよ。でも、そういったことをちゃんと思い浮かべられないと、戦争中に何があったのかもわからない。ファンタジーのような、曖昧な世界になっていってしまうような気がして。そこに生活があったんだよということを、なんらかの形でもう一度自分たちの気に留めておいたほうがいいなと思ったんです」

——当時の生活を知った2016年版に対し、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、主人公のすず(声:のん)をより知る作品になっています。


「2016年版のすずさんは、戦争中に生きてきたいろいろな人の代表者として描けたような気がするんです。今度は、より個人的なすずさんに焦点を当てています。すずさんも心の中には、自分はなぜここにいるんだろうかとか、自分の存在に意味はあるんだろうかとか、こんな私だけど生きていていいんだろうかっていうような悩みとか思いがあったはずで。そんな、我々と同じような心を持って生きている人たちの頭の上に、あんな爆弾が降ってくるんです」



2016年版は「まず生活を描きたくて」と片渕監督。「もう少しすずさんという人とつきあうと、違う面が見えてくる」というのが今作。
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