エンターテインメント

片渕須直監督に聞く、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

2019.12.19

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戦艦の入港日など史実に忠実な描写も多い。呉の空襲後、飛行機雲が残っていたことを知り、「公開中に飛行機雲を書き足しました」。

——2016年版制作時に、舞台となる時代や場所などについて徹底的に調べたとか。


「そもそもこうのさんが史実にもとづいた年表を作って、それに物語をあてはめて漫画を描かれているんですよね。僕らは漫画から逆算して、何月何日なのかなって読み取っていきました。こうのさんの漫画って、あえて表に出していないことがたくさんあって。“こういうふうに思って描いたんだけど、全部は見せません”っていう。読者自身で読み取って、自分でたくさん発見できると楽しいよ、みたいな描き方なんですよ。この映画作りは、それを率先してやってみたという感じなんですけど、やってみたらその日の天気までわかって。どれくらい雲が出ていたかまでわかるんです」

——原子爆弾が投下されたあとのキノコ雲も……。


「キノコ雲って、いつ消えたのか。実は、あの日1日出ていて、翌日の朝起きたらなくなっていたらしいんですよ。すずさんが住んでいるのは呉なので、広島市から20キロメートル離れているんですね。20キロメートルだから2万メートル。2万メートル離れていて、キノコ雲の高さが1万6000メートル。遠くに見えるんじゃないんです。上に見えるんです。そう思うと、頭の上にあんなのが丸1日あって、でもすずさんたちはやっぱりお昼ごはんも晩ごはんも食べたんだろうなというのは、何か不思議な思いがします」

——でも、それが“生きる”ということですよね。


「そうなんです。生活する、食べることがどこまでいってもつきまとう。それを真剣に考えたいなということが、『この世界の片隅に』を作るときのそもそもの動機だったんですよ。今作になると、食べるシーンはだいぶ減ってしまいましたけど。追加されているシーンでは食べてないので。やっぱり、生活から、ちょっと違うところに目を向け直したということですね。違う角度から見たすずさんは、こう見えるのだっていう映画だと思って観に来ていただけるといいんじゃないかなと思います」

片渕須直/Sunao Katabuchi

アニメーション監督
1960年生まれ。日本大学芸術学部映画学科在学中から、宮崎 駿監督作品の脚本を手がけたほか、映画『魔女の宅急便』では演出補を務める。96年、テレビアニメシリーズ『名犬ラッシー』で監督デビュー。主なアニメ映画監督作に、『アリーテ姫』、『マイマイ新子と千年の魔法』など。2016年公開の映画『この世界の片隅に』で第90回キネマ旬報ベストテン日本映画監督賞などを多数受賞。


『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』


原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊)

監督・脚本:片渕須直

声の出演:のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 藩 めぐみ 岩井七世 牛山 茂 新谷真弓/花澤香菜/澁谷天外

配給:東京テアトル

12月20日(金)より全国公開

公式サイト https://ikutsumono-katasumini.jp

Ⓒ2019こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会
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