三浦百惠さんに続々と届いている「幸せのお裾分けをありがとう」の声
——『時間の花束』未公開の写真とともに——
「鷲沢先生のおかげで、ここまでこられました」——三浦さん
三浦さんは当初、鷲沢さんの個人レッスンを受けていましたが、途中からグループレッスンに参加。現在は、気心の知れたクラスメートとともに、月1回のレッスンを楽しんでいます。家族の後押しで誕生した愛情溢れる作品集
2019年の夏、出版界に大きなニュースが駆け巡りました。三浦百惠さんがキルト作品集を上梓するというのです。
それはキルト愛好家にとっても、往年の百恵さんファンにとっても、この上なく嬉しいサプライズでした。
三浦さんの歩んできた人生も垣間見られる同書は、手芸関連の本としては異例の売れ行きを見せ、2019年10月末時点で20万5000部を刊行しています。
「キルトの魅力が伝わる一冊です」——鷲沢さん
三浦さんの作品、「ファースト・キルト」。詳しくはこちらの記事をご覧ください。実は、出版の話は数年前から出ていたといいます。発案者は師であり、多くの著書を持つ鷲沢玲子さん。
「作品を整理するためにも、本にまとめてみたらとすすめていたのですが、ご主人に迷惑がかかるかもといってためらわれていたんですね。でも、そのご主人が背中を押してくださって、やっと心が決まったそうです。
三浦さんが一生懸命キルトを作る姿を見ていたから、友和さんも賛成してくださったのでしょう。お互いを尊敬し合っていて、本当に素敵なご夫妻です」。
本作りが実際にスタートしたのは、2019年2月。撮影には作品の世界観にふさわしい、担当編集者こだわりの小道具が用いられました。
たとえば、友和さんの半纏は、三浦さん夫妻が共演した映画『古都』の英文版書籍とともに撮影されています。
三浦さんは撮影については担当編集者に委ね、一切口を挟むことはありませんでした。
でき上がった写真を1枚1枚見て、「素敵ですね、ありがとうございます」と感想とお礼を述べたといいます。
三浦さんが感激した読者からの手紙の数々
完成した作品集を非常に気に入った三浦さんは、「還暦のいい記念になりました」と話します。
小誌でご紹介することになった点についても、「とても素敵な雑誌の、それもお正月号に、鷲沢先生と一緒にご紹介いただけて光栄です」と喜んでくださいました。
三浦さんの作品、「ぬくもり le temps doux」。詳しくはこちらの記事をご覧ください。でも、三浦さんが何より喜んでいるのは、本を読んだ読者からの手紙。
90代の女性から若い世代まで、版元の日本ヴォーグ社と鷲沢さんのアトリエに続々と届いています。
その大半に綴られているのが、「幸せのお裾分けをありがとう」「登場する決断をしてくださって、ありがとう」といった言葉。感謝の気持ちだといいます。
本のあとがきに三浦さんが記しているとおり、同書の印税は東日本大震災をはじめとした日本各地で起きている災害で被災した地域へ寄付されます。
そのため、「この本を買ったことで、些少ではありますが、百惠さんと一緒に被災地に寄付できることがすごく嬉しいです」という手紙も届いているのだそう。
「三浦さんは『こんなお手紙をいただいたんです』と感激していました」と明かす鷲沢さんはまた、この本のおかげで、キルトをやってみたいと思う人が増えていると話します。
「長く続けていれば、自分にもいつかこんな素敵な作品が作れるかもと刺激になるみたいですね」。
反響の大きさは、『時間の花束』の特設ブースが設けられたキルト展でも、如実に表れていました。
三浦さんの作品が複数展示されたブースには長い列ができ、入場規制が行われるほど。
「素敵な作品」「なんて細かいのかしら」といった感嘆の声があちこちから賑やかに聞こえてきました。
人の心を動かし、幸せにするキルトを
キルト展で特に人気だったのが、三浦さんが子どもたちのために作ったサンタのベストです。
わずかにサイズが違う2枚が並べて展示されているコーナーへくると、みなさん一様に破顔して、嬉しそうに見入っていました。
自分の子育てと重ねて見ていた人も少なくなかったかもしれません。
このサンタのベスト、実はもう1枚存在しています。三浦さんがファースト・キルトをプレゼントした甥のために作った1枚です。
ベストを制作していた当時、息子たちは5、6歳のやんちゃ盛り。
子育てと家事で大わらわだったに違いない時期に、丁寧な手仕事で3枚のキルトを作り上げた三浦さん。
三浦さんの作品、「ようこそ! Soyez les bienvenus!」。詳しくはこちらの記事をご覧ください。のちに20歳のお祝いのキルトを作ったときも、甥の分も制作しました。
三浦さんの愛情の深さと、子育てを心から楽しんでいたことがうかがえる話ではないでしょうか。
三浦さんはこれからもきっと、師である鷲沢さんとともに、人の心を動かし、幸せにするキルトを作り続けることでしょう。