粉吹四方皿(辻村史朗 作)かずかず なごう まめなように
——いい年になりますようにと、三つ肴とお蘇
お雑煮の次に欠かせないのは、口取りの三つ肴です。
おまじないのような文句は、土井さんのお祖母さまやお母さまが、三つ肴を取り分ける際に歌うように口にしていた言葉だといいます。
数の子には子孫繁栄、白く清らかに仕上げたごぼうは細くとも長く慎ましく暮らせるように、黒々と仕上げた黒豆にはまめに生きられるように、誠実な生き方と家族のつつがなき健康を願います。
日本は「言霊(ことだま)の幸(さきわ)ふ国」。
この言葉を唱えながら、新年を迎えた祝意を込めたのです。
粉吹四方皿(辻村史朗 作)
友を招き一献酌み交わすときには、趣ある好みの器でもてなす。愛蔵の古い朽木盆に三つ肴を盛りつけた皿をのせ近藤悠三作徳利で自由自在に。金銀の水引を結んで徳利にかける。関東では、たたきごぼうではなく田作りを祝い肴とする所もあります。貴重な田んぼの肥料だった片口いわしで、豊作を祈ったのです。
心あらたまっていただくお屠蘇は甘美で、祝い肴によく合います。みりんを使わずお酒を用いるのが土井家流。
「おめでとう」とご挨拶しながら口にすると、長生きが約束されたようです。
燗鍋や屠蘇飾りがなくとも「徳利に水引を結んでお祝いするのもいいものです。依代(よりしろ)ですから」と土井さん。
●黒豆
【材料】・黒豆(乾物) 300グラム
・さび釘 10本(約100グラム)
【煮汁】
・砂糖 250グラム
・醬油 1/4カップ
・塩 大さじ1/2
・重曹 小さじ1/2
・水 10カップ
【作り方】<1日目>
(1)黒豆は洗って水気をきる。さび釘は洗ってさらし布で包む。
(2)鍋に煮汁用の水を入れて煮立て、調味料と重曹、さび釘を入れたら火を止めて黒豆を入れる。一晩おいて黒豆をもどす。
<2日目>
(3)(2)を強火にかけ、浮いてくるあくと泡をすくい取る。さらに差し水1/2カップを入れてあく、泡を取る。これを2〜3回繰り返す。
(4)(3)に落としぶたをし、さらにふたをきちんとして二重ぶたにし、ごく弱火で8時間煮る。
(5)煮汁が豆にかぶるくらいの量になるまで煮て、火を止める。
<3日目>
(6)ふたをしたまま翌日までおく。黒豆をざるに上げて、煮汁をきる。
●たたきごぼう
【材料】・ごぼう 150グラム
・米酢、塩 各適宜
・いり白ごま 大さじ4
【土佐酢】
・米酢 1/3カップ
・砂糖 大さじ1
・みりん 小さじ1
・塩、薄口 醬油各小さじ1/3
・削りがつお 5グラム
【作り方】(1)ごぼうは洗って約15センチ長さに切り、割り箸ほどの太さに揃えて切り、水にさらして白くする。
(2)熱湯に米酢少々を入れ、ごぼうを5分ほどゆでてざるに上げ、軽く塩をふって冷ます。
(3)すりこぎで軽くまんべんなくたたき、長さを3等分に切る。
(4)土佐酢の材料はすべて鍋に入れて火にかけ、ひと煮立ちしたらふきんでこして冷ます。
(5)すり鉢でいりごまを粗ずりにして土佐酢を混ぜ、(3)を加えてあえる。
*いりごまの代わりに練りごまでも可。分量は40グラムを使用。
●数の子
【材料】・数の子(塩蔵) 200グラム
・塩、重曹 各適宜
【漬け汁】
・削りがつお 10グラム
・みりん、酒、水 各大さじ6
・醬油 大さじ5
【作り方】(1)数の子は薄い塩水(水5カップ、塩小さじ1)につけて一昼夜おき、少し塩気が残る程度に塩抜きする。
(2)鍋に漬け汁の材料を入れて火にかけひと煮立ちさせ、ふきんでこして冷ます。
(3)(1)の数の子の水気をきって、手に重曹をつけ指でこすって薄皮をむき、洗って水気を拭く。
(4)(2)の漬け汁に数の子を漬け、8時間おいたら引き上げる。
お屠蘇
【材料と作り方】日本酒1合にグラニュー糖大さじ1/2、屠蘇散(薬局などで購入)を加えて、1日おく。