女性頭髪専門外来を受診するがん患者が年々増えている
Dクリニック東京 ウィメンズでは、2007年から薄毛に悩む女性のための「女性頭髪専門外来」を開設し、女性ホルモンに注目した発毛治療を行ってきました。
円形脱毛症の一部に保険診療が認められているものの、それ以外の発毛治療は自費診療となるため、治療は広がっておらず、実施する医療機関も限られています。
こうした中、同クリニックは唯一無二の存在として発毛治療に積極的に取り組み、院長の浜中聡子先生は年間1万人以上もの患者を診療する女性の頭髪治療のエキスパートです。
同外来では、加齢による薄毛のほか、甲状腺疾患、炎症性腸疾患、リウマチ・膠原病、貧血などの慢性疾患による薄毛や脱毛の治療にも対応していますが、近年、急増しているのががんに罹ったことやがんの治療によって生じる脱毛です。
「2018年は2016年の約2倍近くまで受診者数が増えています。最も多いのは乳がんに罹患した患者さんで全体の57パーセントを占めます。次いで子宮がん、甲状腺がん、大腸がん、基底細胞がん、卵巣がん、肝臓がん、肺がん、胃がんと続き、多種にわたります」と浜中先生は説明します。
がん患者に生じる脱毛の原因の大半は治療の副作用によるもので、よく知られているのは抗がん剤治療です。
「抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常細胞の増殖も抑えるため、活発に細胞分裂している毛母細胞は攻撃されやすく脱毛が起こります。ただし、抗がん剤の種類や投与量によって脱毛の程度は異なってきます」。
乳がんの場合、抗がん剤治療を受けた約八割の患者に脱毛の副作用が起こるといわれ、エピルビシン、ドキソルビシン、ドセタキセル、パクリタキセルは特に脱毛が起こりやすい薬剤です。
また、「乳がんの治療で使われるホルモン剤は健康な髪に必要なエストロゲンの分泌を抑制するため、脱毛に拍車をかけます」。
さらに、放射線を頭部に照射した場合も、抗がん剤と同様に毛母細胞が破壊されて脱毛が生じます。
外見ケアが普及する中ウィッグでは補えない悩みも
浜中先生は、がん治療による脱毛に対して「アピアランス(外見)ケア」の観点からサポートに取り組んでいます。
アピアランスケアは、がん医療の分野において5年ほど前から注目され始めた支援の1つで、2013年に日本で最初に「アピアランス支援センター」を開設した国立がん研究センター中央病院は、このケアについて「医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化を補完し、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア」と定義しています。
こうした動きもあり、脱毛に対してもウィッグをはじめとするさまざまなサポートが積極的に行われるようになりました。
しかしサポートを受けても、治療後に生えてきた髪質が変わったり毛量が減ったりすることに戸惑う人は少なくありません。
なかには、脱毛することを受け入れられず、がん治療を拒否する人もいます。
このようにウィッグでは対応しきれない脱毛の悩みに苦しむ人に対し、浜中先生はがん治療と並行しながら頭髪のサポートを行っています。
「命を犠牲にすることなく、自分の髪を生やすことを重視した発毛治療があることをぜひ知っていただきたいのです」。