ベーシックカラーの洋服に慣れている、きもの初心者さんにはおすすめの一枚
しかし自然の美しさを彩色だけで表現する加賀友禅は、「地味」と感じる人も少なくないと聞きました。確かに絞りや金銀の箔や刺繍などで手掛けられる京友禅より落ち着いた印象です。
けれど白やグレー、ネイビーやブラウンを基調にした洋服に慣れている、きもの初心者さんにとって、加賀友禅のきものは取り入れやすい染めのきものではないでしょうか。
さあ予習はここまで。いよいよ金沢出張に行ってまいります!
加賀友禅作家・佐藤賢一さんに聞きました。加賀友禅の魅力って何ですか?
早速、加賀友禅作家の佐藤賢一さんのアトリエにお邪魔しました。
佐藤賢一さんは1973年生まれの若手作家のおひとり。ご結婚される時、自らが作った訪問着を奥様にプレゼント! その後、お子さんのお宮参りや入学式など、お祝いの席で着ていらっしゃるそうです。なんて素敵なのでしょう!アトリエには大きな紙に原寸大で描かれた佐藤さんの下絵が貼ってありました。この緻密な線画を拝見しただけでも美しい自然の情景が想像できます!
佐藤さん、唐突ですが加賀友禅の魅力って何でしょう。
佐藤賢一さん(以下、佐藤)「花の匂いさえも描けることでしょうか」
目には見えない匂いをきものに!?
湧き立つ花の匂いを大切にしたい
佐藤「僕はよく花を描きます。そこでこだわっているのが“匂い”。あたかも花の匂いが湧き立つような表現がしたいと思っています。とくに花びらの中心はとても丁寧に作業します。雑になると花が死んでしまうんですよね。牡丹のような大きな花は存在感があるので細心の注意を払って描いているんですよ」
百花繚乱!四季の花々が咲き誇る訪問着
佐藤さんの制作した訪問着。四季の花々が優しい色合いで描かれています。完成したばかりの佐藤さんの訪問着を見せていただきました。まさに、今にも花の香りが立ち込めてきそうです。桜、秋桜、牡丹、萩に藤……。花を愛する佐藤さんらしい作品です。
佐藤「いつの季節も楽しんでいただきたいので四季の花をふんだんに描きました」
こんなにも大胆に、広範囲にわたって四季の花が描かれている訪問着なのに、しっとりとした雰囲気なのは、やはり加賀五彩という落ち着きのある色彩を基調にし、彩色だけで表現する加賀友禅だからではないでしょうか。
やはり、ベーシックカラーの洋服に慣れているきもの初心者さんにも抵抗なく着ることができるような気がいたします。
佐藤さんと古谷編集長との対談は「
三越 きものゴコロ。」にて近日公開予定です。具体的な制作工程や佐藤さんのこだわりなどを古谷編集長がじっくりと伺っています。ぜひあわせてご一読ください!
また、2月12日より25日まで日本橋三越で開催される春のきもの紀行「加賀友禅新作展」では、加賀友禅のワークショップが開催されます。この機会にぜひ加賀友禅の魅力を楽しんでください。取材でお世話になった佐藤賢一さんの新作もここで発表される予定です!
構成・文/笹本絵里 中島敦子 撮影(取材)/八野良則(SDI) 写真・取材協力/加賀染振興協会 参考文献:「やさしいきもの用語小辞典」(世界文化社刊) ※この連載で取り上げて欲しい、皆さんの「いまさら聞けない」きものの基本&疑問をぜひ お聞かせください! 件名「イチから始めるきもの道」と明記し、メールにてお寄せください。 E-mail:k-salon@sekaibunka.co.jp