藤野幸信さん 365日の贈り花ダイアリー 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが手がけたブーケやアレンジメントで綴る365日の花日記。贈り花のある、素敵な暮らしのヒントをお届けします。
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絵本の世界観を花で表現して贈る
主人公は「ニャンコ」と呼ばれる灰色のネコのぬいぐるみ。赤ちゃんのときからずっと一緒にいた男の子に永遠に愛されたいと願う「ニャンコ」が、本物の猫になりたいと旅をしながら成長していく物語をおしゃれに描いたヒグチユウコさん作の絵本『せかいいちのねこ』(白泉社)。大人気となった『せかいいちのねこ』の続編が『いらないねこ』で、続編では捨てられた子猫を見つけた「ニャンコ」がお父さんとなって子猫を愛情いっぱいに育てます。
今回の贈り花は、『いらないねこ』を貸してくださった友人に、私からのお礼のアレンジです。あまりにかわいらしく、ときに泣けてきそうなストーリーと、ひとめ見て気に入ってしまった灰色の「ニャンコ」。その世界観を花で表現してみたくなりました。
灰色といえば、ちょうどいい花があるではありませんか。「JAながさき西海」が作る染めのアスチルベです。自然界にはない染めの花色は、絵本のファンタジーな世界にぴったり! さらにもう一つ、灰色がかったブルーに染め上げたスイートピーも加えました。絵本の表紙で「ニャンコ」が抱いていた子猫の服の色の赤を、挿し色に加えることに。
いかがでしょう? 『いらないねこ』の雰囲気がちゃんと出ているでしょうか。贈り花としては滅多にない地味な花色ですが、今回のテーマにはぴったりの組み合わせではないかと思います。絵本の世界を花で描く、その作業がこんなに楽しいものだとは思いませんでした。
【使用花材】アスチルベ グレー(染め)
スイートピー アッシュブルー(染め)
アネモネ セントブリジット
ハーデンベルギア
ルピナス
銀葉アカシア
贈り花のヒントお借りしたものを返す際のお礼、というのも贈り花のよい機会だと思います。「ありがとうございます」の気持ちをちょっとしたアレンジやブーケにして贈れば、お相手にもよく伝わると思います。相手の方に余計な気を遣わせないサイズのアレンジやブーケにするのがおすすめです。このときは、アレンジを入れたボックスの上に重ねてラッピングし、一つにまとめてお送りしました。このラッピングなら、例えばお菓子と花を一緒に贈ることも可能です。
下の写真をスワイプしてご覧ください。
藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅から少し離れた段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。
広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を卒業後、花の道に進んだ異色の経歴。
店名のtrémoloは音楽用語で震音を表し、「感動で声が震える」ことを意味する。感動する花束を多くの人に届けたい、という思いから、市場を頼らず、自ら生産者情報を入手して、お気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。
制作したブーケのアップを続けているフェイスブックから人気が広がり、全国各地から贈り花のオーダーが届く。
月刊『フローリスト』などの雑誌の連載や表紙などでも人気。2018年6月に新著『季節の色合いを楽しむブーケ』(誠文堂新光社)を発刊。
https://www.fleurs-tremolo.com