繁華街を走る香港名物にもなっているレトロな路面電車トラム。100年以上前から運行しているという。
新旧、東西が溶け合う街・香港の魅力
古き良きものを大切に残しながらも、時代を先駆けてゆく新しさがあるのも香港の魅力の一つです。そして西洋、東洋の垣根を越えて色々な国の文化が混じり合っているというのも興味深いところ。その気風は、食はもちろん、街の様子からも感じることができます。
「マンダリン オリエンタル 香港」から程近い通りを行き来しているのは、2階建てのトラム。便利な地下鉄がつくられた今でも、現役で市民の足となっています。また、少し歩いたところには香港島と九龍半島を結ぶスターフェリー乗り場もあります。
流行の発信地、オールド・タウン・セントラル
若者たちを中心にトレンディスポットとなっているのが、オールド・タウン・セントラルと呼ばれている一帯。都会的なビル群がそびえる下に広がっているのは、西洋と東洋、伝統と革新、過去と現在といった香港の対照的な特徴が共存した世界。英国ネオクラシック様式の「旧セントラル地区警察署」や、初代香港総督の名がつけられた
ポッティンガー・ストリートを歩いていると、街並みの中に古い時代のイギリス文化が融合していることがわかります。
程近い場所には道教寺院である「文武廟」が。受験生や試験を控えた地元の人達が、現在でも文神の文昌帝と武神である関聖帝に祈りを捧げている姿を見ることができます。
ビル群の中に突如現れる古い石畳の階段が続くポッティンガー・ストリートは、19世紀に建造されたもの。
多くの文化が交わるこの地域は、伝統的な職人技と現代アートが入り混じっていることを感じます。ふらりとギャラリーを巡ってみると、東西の著名な作家の作品のすぐ隣に並んでいるのは、才能に溢れた若き新人の作品。警官の宿舎だった歴史的建造物をリノベーションしたアーティストが集う複合施設「PMQ」や、ノスタルジックなモチーフをリ・デザインしたお洒落な雑貨を取り扱う「g.o.d」など、古きものを見つめ直し現代に生かすことをコンセプトにした店舗や施設が人気だそうです。
多くのギャラリーがあるハリウッド・ロードに面した「G.O.D」。中国風のユーモアに富んだカラフルな雑貨や衣料が並ぶ。
中環には活気溢れる市場もある。
市場で香港人の食材へのこだわりを垣間見る
アジア屈指の金融街に位置する「マンダリン オリエンタル 香港」から15分ほど歩いた結志街や嘉咸街あたりは、活気溢れる市場が広がっています。ここは、いわば香港市民のお腹を満たす台所ような存在。肉、魚、青果などの専門店が連なり、地元の買い物客で賑わっています。
驚くのは、売られている食材の多彩さと、肉や魚介、青果などの
生鮮食品の鮮度の良さ。食材のおいしさを高いレベルで追求する香港市民の日常の暮らしこそが、香港が食の都と称される所以であることを知ることができます。
鈴木ニーナ博美/Hiromi Nina Suzuki
エディター、フォトグラファー