藤野幸信さん 365日の贈り花ダイアリー 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが手がけたブーケやアレンジメントで綴る365日の花日記。贈り花のある、素敵な暮らしのヒントをお届けします。
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ツバキだけで和テイストのブーケを作りたい!
仕事の合間を縫って、並々ならぬツバキ愛好家として知られる住職さんのお寺で毎年開催されるツバキ展へ行ってきました。それに触発され、ツバキだけでブーケを束ねてみたくてたまらなくなりました。市場で見つけた江戸椿として有名な紅ト伴椿(ベニボクハンツバキ)を持ち帰り、さっそく束ねてみました。コンセプトは、ツバキのみで作る和テイストのブーケです。
ト伴椿は、中心部の花弁が細かく密集する唐子咲きで、江戸時代初期にはすでに愛好されていた古典品種です。ト伴椿の中心部は淡いピンク色になるのですが、今回使用した紅ト伴椿は、中心部まで鮮やかな赤一色に染まる品種です。まずは、花が落ちないように、花の根元をグルーガンで接着して準備。つややかな葉も美しいので取り除かず、そのまま大胆に束ねてみました。
濃い緑の葉を背景に咲く鮮やかな赤いツバキを、そのままブーケにしてみましたが、いかがでしょうか。1輪の美しさを追求した茶花スタイルとはまた違った、豪華でエレガントな雰囲気があります。和テイストながら、ドレスに持っても似合うようなブーケにも。ツバキの英名はカメリアで、江戸時代に日本からもたらされたツバキは欧米でも大人気となったそうです。あのココ・シャネルも魅了した花ですから、欧米テイストにも取り入れやすかったのではないかと思います。
ツバキには非常にたくさんの品種があるので、束ねてみたい品種を見つけてトライしたいと考えています。この時期の食事会や茶会などの手土産にしても素敵だと思いますので、ツバキのブーケをぜひ贈り花にも利用してみてください。
【使用花材】ツバキ 紅ト伴椿
贈り花のヒントツバキは品種によって花期が異なります。早いものは12月から咲き出しますが、華やかでかわいらしい品種が咲くのは3月。切り花でもちょうどいま、多くの品種が出回ります。赤、白、ピンクと花色は限定されますが、2色が混じるバイカラー品種もあり、また花形に変化があるので、意外に品種選びも楽しめます。今回のブーケはボリューム感たっぷりですが、こぢんまりまとめたブーケも愛らしく、季節感のある手土産になると思います。
下の写真をスワイプしてご覧ください。
藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅から少し離れた段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。
広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を卒業後、花の道に進んだ異色の経歴。
店名のtrémoloは音楽用語で震音を表し、「感動で声が震える」ことを意味する。感動する花束を多くの人に届けたい、という思いから、市場を頼らず、自ら生産者情報を入手して、お気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。
制作したブーケのアップを続けているフェイスブックから人気が広がり、全国各地から贈り花のオーダーが届く。
月刊『フローリスト』などの雑誌の連載や表紙などでも人気。2018年6月に新著『季節の色合いを楽しむブーケ』(誠文堂新光社)を発刊。
https://www.fleurs-tremolo.com