――作品自体の魅力を、どういうところに感じますか?
「『ファウスト』が題材になっていることもあって、一人で台本を読んでいるときは、主人公が欲望にのまれて闇に落ちていくにつれて、重苦しくて憂鬱な気持ちになっていくような印象がありました。でも、いざ稽古をしてみたら全然逆で、むしろ、森田 剛さんが演じるフォーチュンが魂を奪われてからのほうがエネルギッシュに加速していく。人間本来の感情がむき出しになったパワフルさを感じます。人間の闇を描きつつ、エンターテインメントな作品になっているところがすごいなと思います」
――もしも悪魔と契約して望みを叶えられるとしたら、吉岡さんは何を望みますか?
「難しいです、契約の代償が大きいですから。なので私は、悪魔に話しかけられたら、小さな代償で済みそうなことをお願いします。小さいけれども、かゆいところに手が届くようなこと……たとえば、睡眠時間が半分でも今と同じように動ける、とか(笑)」
舞台出演は2016年12月の『ナイスガイinニューヨーク』以来となる。――それ、いいですね(笑)。吉岡さんは10代の頃に小劇場で観た学生演劇がきっかけで、女優を志すようになったそうですね。
「はい。そのときの感動は特別なものでした。まさに目を奪われたという感覚があって、こういうことに熱量を注いでいる人たちと一緒に過ごせるような人生を送りたい!と直感的に思いました。なので、舞台に対する憧れは人一倍あります。今回この『FORTUNE』という素晴らしい作品で久々に舞台に出演できることが、本当に嬉しいです」
――書道八段で、書道家を目指したこともあったという吉岡さん。女優になってよかったといちばん感じるのは、どんなときですか?
「映像作品では、共演者さんや演出家さん、スタッフさんたちと、どういうふうに面白くやっていこうか、というような会話をしているときに、すごく喜びを感じます。舞台でも、どちらかといえば本番より稽古のほうが好きですね。みんなで意見を交わしながら一つの世界をつくっていく楽しさもありますし、稽古をするたびに少しずつよくなる手応えを実感できるのも嬉しい。それを積み重ねていく幸せを味わえるのは、舞台の稽古ならではかもしれません」