ニッポン生まれの「花」に恋して 第2回(全3回) カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・アジャーニ……。世界的な女優やセレブリティを顧客に持つ、パリのトップフローリスト「オドラント」の二人、エマニュエル・サマルティーノ氏とクリストフ・エルベ氏を虜にしたのが、「世界でも比べるものがない」と彼らが絶賛するニッポンの切り花。端正にして独創的、進化を続ける「花」に逢いたくて来日しました。その縁をつないだのは生産者の側に立って、時代の先端をいく花の作出をずっと応援してきたフローリストの並木容子さん。並木さんの案内で、花が生まれる温室や最先端の市場を訪ね、彼らが心に適う花を選んで作った作品をご紹介。そこまで彼らを夢中にさせるニッポン生まれの花の秘密を、並木さんの解説でひもときます。
前回の記事はこちら>> 日本の「花」に逢うべく、来日を果たしたパリのトップフローリスト「オドラント」の二人、エマニュエル・サマルティーノさんとクリストフ・エルベさん。
今回の2人のテーマは「Spontanéité(自然に・自発的に)」。日本への旅で出会える人、花、もの、すべてを大切にしたいという想いが込められているそう。ここでは市川バラ園で選んだバラを中心に行われた、ブーケ作りのデモンストレーションを誌上公開。誰からもこよなく愛されるブーケ作りの奥義を貴重なメッセージとともにご紹介しましょう。
使用したバラはジェンティーレ、ルールマジク、イヴ・シルバ、オードリー、ジャルダン・アラ・クレーム、ソフィア、ローランベー、ジャルダン・パフューメ、ルナロッサ、ロワイヤル、ジャルダン・アニベルセルなど。
葉はすべて取り除くでき上がったときに、パッと花に目が行くように、葉はあえて全部を取り除きます。取り除くときも花の美しい向きを探しながら。魅力的に見せることが自分たちの仕事。
準備の時間もいとおしい1本ずつ丁寧に、そしていとおしみながら手で葉を取り除き、色別に並べる時間が大切。そこからアレンジが始まっています。花弁には一滴の水もつけないよう、完璧に準備することが大事。
最初の1本は軸となる花を今回のブーケは濃い色から。何を軸にしたいかを意識して最初の1本を手に取ります。だからといって、その花が中心と決めつけず、ひと花ひと花を輝かせます。
センスを高めるにはよく観察すること美しいものをよく観察すること。全体をただ漫然と見て美しいというのではなく、心揺さぶられた部分はどこなのか、細かいディテールに着目することが大事。
茎の下のほうを持って空気感を出すブーケは下のほうを持って束ねると、動きが出てふんわりと柔らかい雰囲気になります。ある程度まとまったら仮留めをし、また束ねる。常に同じ位置を留めれば雰囲気を損ねません。
偶然性の素晴らしさ「アクシデント」柔らかい茎の花は束ねていると、その花の自重で意図せずに花が動きます。それもまた楽しい「アクシデント」。植物の自然のままの姿を尊重し、「そっと生かす」感じに。
花器とのバランスには妥協しない丈は実際に花器に入れて、全体のバランスを見ながら調整します。器と花の美しいバランスが見つかるまで決して妥協せず、何度も切り揃えては花器に入れ直します。
作りながらとことん見る一本一本の花をよく見ること。そして全体をよく見ること。ひと花ひと花が輝いているか? 何度も見直して整えます。正面だけでなく後ろもしっかり。
Christophe HERVÉ クリストフ・エルベ (左)
Emmanuel SAMMARTINO エマニュエル・サマルティーノ(右)ヘアアーティストを経てオドラントを経営するクリストフ氏と、現役のトップメイクアップアーティストでもある共同経営者のエマニュエル氏のデュオフローリスト。2003年、パリにオドラントをオープン。花が持つ自然の美を生かしながら、新たな魅力を引き出すセンスに魅了されるファンが多い。二人は無類のバラ好き。
ODORANTES paris
9 rue Madame 75006 Paris
TEL:01 42 84 03 00
http://www.odorantes-paris.com案内:並木容子(なみき ようこ)東京・吉祥寺でフラワーショップ&スクール「ジェンテ」を主宰して25年目を迎える。ナチュラルテーストのブーケに定評がある。全国の生産者と交流があり、花のセレクトショップというべきスペシャルな花揃えが人気。2015年から本誌の表紙を担当。
http://www.gente.jp 協力/並木容子〈ジェンテ〉 撮影/鈴木一彦 取材・文/井伊左千穂 協力/市川バラ園 久保田邸(茶室)
『家庭画報』2020年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。