本当は人と関わりたくて、たぶん人懐っこい
想像していたよりもさらに繊細だと思ったのは、迅を「一度決めたことは曲げない、みたいな感じかと思っていた」から。でも、実は「周りへの感覚がすごく繊細で。ちゃんと周りに影響されて変化がある人間だなと思ったんですよね」。
「やっぱり台本だけだとイメージにも限界があって。(岐阜県の)白川町っていう町に行って、これからは数少ない人間としか関わらないみたいな、こう決めたんだっていう感じかと思ったら、実はそうではなくて。ホントはもっとすごく正直に関わりたいし、たぶん人懐っこいし。だから、それを押し殺して、自分に嘘をつき続けて白川に逃げて行ったんですよね。最初からそう感じてはいましたけど、さらにそういう気持ちが強かったんだなと思いました」
それはまだ東京で会社勤めをしていた頃。飲み会での同僚とのやりとりが回想として描かれていますが、それはまさに迅が表立って嘘をついた瞬間で、「精神的にも体力的にもしんどかった」と言います。
「そういう飲みの場って普通にあると思うんです。迅がゲイだからどうとかというわけではなく、悩みとかコンプレックスとか、あるじゃないですか。それを飲みの場で話題にされて。どうにもできないしんどさがあるんですよね。正解ってなんだろうって思っていて。“違うよ”って言うことで、その場はしのげましたけど、でも自分に嘘をついているし、周りにも嘘をついているし。かといって、“実は僕、同性愛者で男が好きなんです”って言うことが正解なのかもわからない。あの場での正解はたぶんないんですよね」
本作に出演したことによって、「今の日本ではLGBTQの方々が生きづらいと自分が思っていたよりはるかに生きづらいと感じました」。