——園子が抱えていた秘密を明かしてからの心情、その描き方について教えてください。
タナダ:哲雄が一生懸命ドールを作っていて、園子はそれを完成させてほしいという気持ちで。それは愛情だったり、ちょっと怖い見方をすると哲雄に対する執着かもしれないですし……。残せるものがないから、園子としては哲雄の中に残るというか。でも、それってそのあとの哲雄を苦しめるかもしれないっていうこともたぶん彼女はわかっていて。哲雄もそれがわかっていて受け入れるっていう流れにしたかったんです。
蒼井:私の中で今回楽しかったのは、園子のキャラクターをそのまま作っていくというよりも、一度全部哲雄の目線を通すというか。哲雄目線で物語は進んでいくから、私は過去の園子でしかなくて。哲雄の記憶に残っている園子の表情だったり園子との出来事だったりっていうのを演じていく感じだったんですよね。実際……ね? なかなかあんなにうまくは……。
タナダ:無理だと思います。そこがファンタジー。
蒼井:そのバランスが、演じていてすごく楽しかったですね。タナダさんの脚本は、ホントにありがたい脚本で。こっちが考えなくても台本どおりに演じれば、きちんとタナダさんが撮りたかったであろうものになるんです。すごく明確な地図を渡されている状態なので、そのまま進むということをしていました。
——ほかの作品の脚本とは違うのでしょうか?
蒼井:わかりやすいですね。作品のテンポだったり間だったり音だったりがすごくすんなり全部見えてくる、聞こえてくるっていう感じで。タナダさんを知ってるっていうのもあるのかな。感覚が近いのかなという気がしています。
——タナダさんは脚本を書くとき、特に意識していることはありますか?
タナダ:あんまり、このときにこうこうこうして、こう動いて、このときにこれを言ってとかっていうことは、やらないようにしていて。セリフとちょっとしたト書くらいで、書き過ぎないようにというのは気をつけています。
職人に対する憧れがあるというタナダさん。15年ほど前にラブドールの存在を知り、「クオリティの高さと美しさに衝撃を受けました」。