【膵がん検診】大阪国際がんセンター 検診部 消化器検診科
膵がんリスクの高い人向けに定期的な精密検査を行う
大阪国際がんセンター 検診部 消化器検診科 副部長 膵がんセンター内科系部門長
井岡達也さん
1964年生まれ。日本大学医学部卒業後、大阪府立成人病センターを経て、2006年より現職。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医。進行膵がんに対する化学療法および放射線療法の開発に注力。見つかりにくい膵がんの早期発見を目指す
膵がんは日本人のがんの死亡原因で男性では5位、女性では3位。罹患者数は増え続けており、また若い年代での発症が増えてきているのが特徴です。
一方、見つかりにくいがん、抗がん剤などが効きにくく、治りにくいがんとしても知られています。近年、八千草 薫さんら著名人が亡くなることが続いたこともあって、怖いがんとしての認知が高まってきました。
大阪国際がんセンター 検診部 消化器検診科の井岡達也さんらは、なんとかこの膵がんの早期発見ができないかと研究を重ねてきました。そして、1998年から膵がんの検診システムを試行しています。
リスクが高いと思われる人を最初に抽出する
とはいえ、すべての人に膵がん検診が必要なわけではありません。
次第に明らかになってきた膵がんの危険因子を加味し、また、一部を臨床研究として行っているため、対象は、人間ドックなどで膵臓にのう胞や主膵管拡張があるといわれた人に絞って定期的に経過観察しています。
しかし、その他にも、(1)糖尿病の家族歴がないのに、最近糖尿病と診断された(もしくは食べすぎていないのに、急に糖尿病が悪化した)人、(2)血液検査でエラスターゼ1やCA19‐9など膵臓に関する項目の値が高いといわれた人、などにも検査を行っています。
「検診として行うのに適当な危険因子を選び、検査方法を決めて、数値をどのあたりで区切るかを研究しながら項目を決めてきました。これらの項目のいずれかに当てはまるかたは、まずかかりつけ医に紹介状をもらって、診察を予約していただきます」(井岡さん)。
最初の診察の際には問診、血液検査や膵臓のエコー検査を行います。それによって、5ミリ以上の膵のう胞と2.5ミリ以上の主膵管拡張が見つかった35歳以上75歳未満の人は膵がん検診の対象者と判定され、3か月または6か月ごとの膵精密超音波検査や、血液中のアミノ酸を分析するアミノインデックス®を調べます。
この膵精密超音波検査では熟練した技師が30〜40分かけて慎重に検査します。
膵精密超音波検査は、この検査に熟練した臨床検査技師の福田順子さんらが時間をかけて調べる。また、検査の途中で受診者にミルクティーを飲んでもらうことにより、胃を膨らませて膵臓を観察しやすくするよう工夫しています。1年に1回、造影剤を使用したCT検査も併用します。
そこで何らかの変化や異常が見つかったら、外来での超音波内視鏡検査(EUS)やMRI検査を追加します。
さらに悪性を疑う場合、5日前後の入院が必要となる膵臓の内視鏡検査(EUS-FNAもしくはERCP)を追加します。
「検査対象となったかたには頻回に病院に来ていただくことになりますが、研究への協力とご自身の健康管理のために、続けていただいています」。
丁寧な診察と検査を繰り返す
こうして、丁寧に検査と診察を繰り返すことで、早期の膵がんが見つかり、手術などの治療を受けて回復した人が増えています。
井岡さんらは、現在はこの定期検査の頻度が3か月ごとか6か月ごとがよいのかを分析しているところです。
膵がんの治療も担当する井岡さんは「なかなか手強いがんですが、早期発見、早期治療ができれば治療成績もよく、今後の治療法の開発を待つことができる」と話す。この膵がん検診は人間ドックではなく、また通常の検診でもありませんが、膵がんのリスクが高いことがわかった人には“転ばぬ先の杖”となるはずです。
前述の項目のいずれかに該当するといわれたことがあるならば、かかりつけ医に相談のうえ、検診の受診を検討するといいでしょう。
膵がん検診の受診の流れ
大阪国際がんセンター
検診部 消化器検診科住所:大阪府大阪市中央区大手前3-1-69
TEL:06(6945)1181
URL:
https://oici.jp膵がん検診は臨床研究。
※紹介状の持参が条件で要予約。