2月の季語「紅梅(こうばい)」
早春に、他にさきがけていち早く花をつける梅は、俳人にことのほか愛されてきた。その中でも白梅は、どちらかというと男性のイメージがある。華やかさというより、清せい冽れつな印象があるからだろうか。
それに対して、「紅梅」は女性を思わせるものがある。同じ梅の花なのだけれど、真っ白なものとは少し違う赤さの持つ可憐さが、俳句の世界では大切に愛でられてきた。
紅梅やゆつくりとものいふはよき
——山本洋子この句を読むと、性急にものを言いたがる自分を恥じたくなる。とにかく言いたいことを言わなければいけないと焦るあまり、「早く早く」と心の中で唱えているようで。
今は、すぐに結果を欲しがる人が増えている。忙しい世だから仕方ないかもしれないけれど、もう少し大らかにこの世を、そして季語を受け止めたい。
白梅の清潔さ、そして紅梅のそこはかとなき色気、あるいは上品な若々しさ。
そんなことに思いを馳せる時、つつましいけれど紅梅から滲み出てくる華麗さに、つい立ち止まってしまう。
かい みちこ◎「群青」共同代表。俳人協会理事。最新句集『カムイ』(ふらんす堂)が俳人協会賞、小野市詩歌文学賞を受賞。著書多数。〔今月の逸品〕
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撮影/唐澤光也〈レッド ポイント〉 スタイリング/細田宏美
『家庭画報』2020年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。