最新鋭の手術支援機器を取り揃え、短期間で確実かつ安全に手術を実施
同クリニックでは16年の開院以来、この難治性の好酸球性副鼻腔炎の診療に注力してきました。
治療の柱に据えているのは「内視鏡下鼻・副鼻腔手術」です。松脇先生はこの手術の名手として知られ、4000例以上の手術実績があります。
一般的に鼻の手術では5日ほどの入院が必要ですが、同クリニックでは日帰りまたは1泊2日入院が基本です。
短期間で確実かつ安全に手術が行えるのは執刀医と麻酔科医の力量・経験に加え、最新鋭の手術支援機器を揃えているからです。
「患部を鮮明に拡大視できる4Kハイビジョン内視鏡システム、CT画面上に誤差1ミリ以内で手術器具の位置を表示する手術ナビゲーションシステムを導入し、特に後者を活用することで頭蓋や眼窩(がんか)など周辺臓器を損傷するリスクをかなり減らすことができました」。
この体制のもと、実施した1000余りの手術のうち、重度の合併症は1件も発生していません。
手術による嗅覚改善率が70パーセントといわれる中、同クリニックのそれは85パーセントに達します。
「好酸球性副鼻腔炎を含め、鼻の病気が原因の嗅覚障害は手術で治せることをぜひ知ってほしいです」。
発症から治療までの期間が嗅覚改善率に大きく影響する
一方で、15パーセントは手術をしても嗅覚は改善しません。松脇先生によると、その違いは罹患期間にあるといいます。
「嗅神経などを長期間使っていないと廃用症候群を起こし、手術で原因を取り除いても嗅覚が戻ってこないのです。できるだけ早く受診し、適切な治療を受けることが大切です。この鉄則はどの嗅覚障害にも共通します」。
たとえば、感冒罹患後の嗅覚障害の場合、発症後2か月以内に漢方薬の当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)による投薬治療を開始するか否かが改善率に大きく影響することがわかっています。
「日本では世界に先駆けて嗅覚障害診療ガイドラインを策定し、原因別の治療法が確立しています。嗅覚を取り戻すには、ガイドラインに基づいた治療を早期に行うことが肝心です」。
嗅覚障害の診療チャート
日本鼻科学会「嗅覚障害診療ガイドライン」を参考に作成欧米で科学的効果が認められている「嗅覚刺激療法」を治療に追加する
松脇先生は手術によって鼻の状態が回復しているにもかかわらず、嗅覚が改善しない人に対する新しい治療にも取り組んでいます。
それは欧米で科学的効果が認められている「嗅覚刺激療法」です。
4種類の異なるにおいで鈍った嗅覚を刺激し続ける
植物や果物の写真を見て、においをイメージしたうえで実際のにおいを嗅ぐという嗅覚トレーニング法になります。
半年間毎日、4種類の異なるにおいで嗅覚を刺激し続けることで改善を促します。
途中でにおいを変えたほうが改善率は高まることがわかっているので、開始から3か月で使用するにおいを入れ替えます。
「嗅覚障害になると、住んでいる世界がモノクロームに映るともいわれます。それほど嗅覚は私たちの生活に潤いをもたらしているのです。“たかがにおい”とあなどらず嗅覚に異常を感じたら、近隣の耳鼻咽喉科をすぐに受診してください」
Information
松脇クリニック 品川
東京都品川区北品川6-7-29 ガーデンシティ品川御殿山1階
- 松脇クリニック 品川 嗅覚外来 案内 〔主なスタッフ〕医師13名、薬剤師4名、臨床検査技師1名、診療放射線技師2名、臨床工学技士1名、看護師16名、事務スタッフ6名 〔主な連携先〕耳鼻咽喉科、呼吸器内科、アレルギー科、麻酔科 診察は完全予約制。受診を希望する場合は、WEBあるいは電話による予約が必要。受診の詳細についてはクリニックのHP「当院について/診療情報」をご覧ください。 受診の詳細についてはこちら>> 〔費用〕保険診療
【参考情報】 ●嗅覚障害を専門に診療する医療機関を探したいとき 嗅覚障害を診断するための特殊な検査を実施できる医療機関は少ない。専門施設としては東京大学医学部附属病院、東京慈恵会医科大学附属病院、昭和大学病院、金沢医科大学病院、大阪大学医学部附属病院、広島大学病院、高知大学医学部附属病院、産業医科大学病院(いずれも耳鼻咽喉科)など限られる。
取材・文/渡辺千鶴 撮影/八田政玄
『家庭画報』2020年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。