勝敗にとらわれないスポーツの魅力を伝えたい
「山下会長は、日本のスポーツ文化の発展になくてはならない、大切なかた。東京2020大会後も、スポーツ界を牽引していただきたいです」松岡 先日ドイツへ行ったとき、小さなお子さんからお年寄りまで、思い思いにスポーツを楽しんでいる様子に感動しました。日本にも、勝敗にとらわれずに、誰もが生涯を通じて楽しめるスポーツ文化が広まればいいなと強く思います。
山下 こんなことをいうと、JOCの会長なのにといわれるかもしれませんが、スポーツは本来、勝ち負けは二の次でいいと私は思っています。もちろん、勝敗を競うチャンピオンスポーツや、極限にチャレンジするスポーツも素晴らしい。人々に夢や感動を与え、活力をもたらしてくれます。
でも、スポーツ最大の魅力は、1人1人に合ったやり方で体を動かし、自分を表現し、仲間と交わって、気持ちよく汗をかくことです。そうすることで、心を閉ざしていた人が笑顔を取り戻したり、子どもたちが仲間と力を合わせることを学んだりする。そんなスポーツのあり方につながる、東京2020大会になればと願っています。
「代表の喜びも辛さも知り尽くした会長がつくる夢の舞台が楽しみです」── 松岡さん
山下 最後にJOC会長として、松岡さんに心から感謝を申し上げます。いつも選手たちに熱いエールを送ってくださる松岡さんは1番のサポーターです。これからもずっと選手たちを激励し、勇気づけてください。
松岡 はい! 僕は「全員団結」というJOCの応援プロジェクトにもあるように、東京2020大会の成功は、日本人全員の団結あってこそだと思っています。これからも日本中の人たちと心を1つに、選手のみなさんを応援させていただきます。
修造エール
山下会長には時折“不思議な声”が聞こえるのだそうです。
モスクワ大会のボイコットが決まった翌日の試合で足を骨折して入院されたときは、「今までよくがんばってきた! でも、人生にはどんなにがんばっても思うようにいかないこともある。今はゆっくり休め。柔道が自分にとってどういう意味があるのかをよく考えて、またスタートすればいい」という激励の声。
ロサンゼルス大会の準決勝で負けを覚悟したときは、「こんな無様な試合をするためにがんばってきたのか!」という叱咤の声。僕は、それらは会長の心の声なのだと思います。
東京2020大会も心の声に従えば、きっと間違いありません。どうか会長ご自身も、いきいき、のびのび、自分らしく、夢の舞台を実現してください!
松岡 修造 SHUZO MATSUOKA
1967年東京都生まれ。86年にプロテニス選手に。95年ウィンブルドンでベスト8入りを果たすなど世界で活躍。現在は日本テニス協会理事兼強化本部副本部長として、ジュニア選手の育成とテニス界の発展に尽力する一方、テレビ朝日『報道ステーション』、同『TOKYO応援宣言』、フジテレビ『くいしん坊!万才』などに出演中。近著に日めくり『まいにち、新・修造!』。東京2020オリンピック日本代表選手団公式応援団長としても活動中。
公式サイト>>撮影/鍋島徳恭 スタイリング/中原正登〈FOURTEEN〉(松岡さん) ヘア&メイク/大和田一美〈APREA〉(松岡さん) 取材・文/清水千佳子 撮影協力/日本オリンピック委員会
『家庭画報』2020年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。