——先ほど、「その場その場で」という言葉がありましたが、お二人のシーンも現場で変わることがあったのでしょうか?
松嶋:あまりないですね(笑)。
大沢:台本と違うということは基本的にはないです。
松嶋:お互いの間でも、「動きがこうなってこうなるからこうしようよ」という相談も必要ないというか。ご一緒させていただくのが、もう5回目ですから。
大沢:長く一緒にお仕事させてもらってるから、すごく信用していて。望の存在は、亡くなってしまったあとも重要で、それが究極の段階で出てくるんです。それって、台本を読むだけだとクリアにはわかりにくいんですよ。台本もまだいろいろ変わっていくんだろうなっていう雰囲気があったし。そういう中で病室のシーンは、そのあと2か月強続く撮影の、間違いなく軸だと思っていて。シーン自体も命に関わるものだったし、夫婦関係以上の2人のエネルギーを持ち込まないといけないし……。自分としては初めての人だとちょっとそういうのは難しいんですけど、(松嶋さんとは)信頼関係があったので、そこまでのテンションで最初から現場にいられたのは、すごく感謝しています。松嶋さんは、現場に入ったときとか本番になったときの集中力が素晴らしいんですよ。どんどんテンションが上がるし、僕が上がれば一緒になって上げてくれるし。やっぱり僕らは共鳴しあう仕事なので、改めて一緒にお仕事できてよかったなというのはありますね。褒めすぎたかなぁ(笑)。
松嶋:後悔してます(笑)?
大沢:半分ぐらいでよかったかな(笑)。でも、ホントなんですよ。別に盛ってるわけでもなくて、ホントに自分が感じたままを話しました。
松嶋:大沢さんとは何作かご一緒して、人柄とか熱い部分とか思いやりがわかっているので、それが助けとなり、土台となり、私が亡くなるという夫婦にとっての究極のシーンに対しても集中しながらもリラックスしてできるというか。とにかく安心してできるんです。スタートからカットがかかるまで、その数分間の集中と解放をすごく楽しめたシーンでしたね。
「夫婦や家族の関係が映画の根底に流れているので、松嶋さんと長くやってきた集大成が夫婦関係の中に出せればと思っていました」