——成島監督らしいなと思った演出はありましたか?
小池:食堂のシーンとか、病院のシーンとかが長回しなんですよ。単純にカメラのポジションを変えるだけじゃなくて、スタッフさんが音をたてないようにカメラを渡してつないで位置を変えて、その間に壁が外れて……。
大泉:1カットの中で壁、バラシてたもんね。
小池:そう。バラして、小道具を入れて。そこはやっぱり、成島さんは長回しがお好きだって印象が過去にもあったから、成島組だなという感じがしました。
大泉:手品みたいなシーンがあったもんね。僕がお金をばらまくところも長回しだったんだけど、シーンが始まったときにはお客さんが全員いるわけ。でも、振り向いて帰ろうと思ったら、もう誰もいないの。僕が芝居している間に、みんないなくなってて。あれ、手品みたいだったもん。「おぉ! 誰もいなくなった!!」っていうさ。あれはメイキングを撮ってても面白いんじゃない? 本番中にどうやってみんながハケていってるのか。しかもあそこ、一発OKだったでしょ。
小池:そう。ずーっとリハーサルやってましたよね。代役を立てて。食べてる人がお皿を持って(そーっとハケていく)。
大泉:そうそう。
小池:で、スタッフさんがそーっと机を入れ込んで、とか。
大泉:映画の舞台芸術って感じがしましたよね。
——先ほどお話に出てきた病院のシーンがとても好きです。お二人が好きなシーンを教えてください。
小池:私もあのシーンは好きですね。田島がくたってなって、(キヌ子が)ポンポンってするところは、何か変化するポイントだった気がして。優しい照明だったし、「あ、キヌ子はこの人のことをこういう部分も含めて受け入れるんだろうな」みたいな。キヌ子って、意識した男性に対してはどう触れていいのかわからないんだろうなっていう。かわいかったですよね。
大泉:僕はね、キヌ子が田島の手紙を食っちゃうシーン(笑)。口への入れ方が素晴らしい。けっこうでかいんだよな? あれが口の中に収まっていくのが、僕は面白かったなぁ(笑)。さすがに舞台でも何度もやったっていうから。見てても面白かったね。こういうのが上手な人だなと思って。
小池:舞台だともうちょっと大きくて硬い紙だったんですよ。後ろの席の人にもわかるように。何回か口の中、切りましたよ(笑)。
大泉:言ってたね(笑)。舞台はもっともっと大変だった、って。でも、ホントに上手に口の中に放り込んでいくんだよね。やっぱりコメディが上手な人だなと改めて思いましたよ。細かいけど、あれをできる人はなかなかいないんだろうな。小池栄子さんの素晴らしさですよ。ああいうところ、笑っちゃうんだな。
大泉さんを「見ていて飽きない」と言う小池さんと、小池さんを「芝居を離れると僕に対してのツッコミが激しい(笑)」と言う大泉さん。