りんご産地を巡ったその日のインスピレーションを、さっそく新作デザートのアイディアとしてまとめるエルメさん。真剣な面持ち。大正時代に造られた、弘前市の藤田記念庭園内の洋館にて。
Pierre Hermé(ピエール・エルメ)
アルザスのパティシエの家系の4代目として生まれ、14歳のときガストン・ルノートルのもとで修業を始めた。常に創造性溢れる菓子作りに挑戦し続け、独自の“オート・パティスリー(高級菓子)”のノウハウの伝授にも意欲を燃やしている。2007年、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受章。2016年、《世界のベストレストラン 50アカデミー》より「世界の最優秀パティシエ賞」を授与された。なぜ、日本のフルーツはこんなに美しく、おいしいのか──
弘前中央青果、通称「弘果(ひろか)」。日本随一のりんご産地である津軽エリアを中心に、毎日膨大な数のりんごが集まる。りんごは、赤松製の木箱に詰められるのが習わし。りんごにも、競せり場の風景にも関心を寄せるエルメさん。広い競り場にりんご箱が並ぶさまは圧巻だ。【青森のりんご】
世界屈指のりんごの里を訪ねて
現在、青森県で栽培されているりんごは約50種類。“恋空”、“紅の夢”、“金星”など、ユニークなネーミングも印象的。圧倒的に多彩な品種は、りんご研究の賜物
日本全国で栽培されるりんごの6割近くを産する青森県。この地がかくも圧倒的なりんご産地になった起源は、明治初期にあります。
「津軽富士」とも呼ばれる名山、岩木山を背景に、りんご園が広がる。日本におけるりんご栽培は、維新で失業した武士の就農対策として、当時の政府が西洋から取り寄せた苗を全国に配布したことから始まりました。
なかでも冷涼な気候の青森県は、りんご栽培に向いた土地。
時には病害虫と懸命に闘い、そして品質向上への努力を重ねることで、青森県は日本随一の名産地として名をなすようになったのです。
9月〜翌年4月まで毎朝、弘前中央青果で行われるりんごの競り。10月の最盛期には1日に15万箱ものりんごが集められる。青森には、りんごの研究や試験のための施設がしっかりと整っています。現在青森県で栽培されているりんごの品種は約50種類にのぼり、市場に出ているのは40種類ほど。
おなじみの“ふじ”や“つがる”のほかにも、青森では実に多くの種類のりんごが親しまれ、そして未来に向けた新品種も開発されています。
りんごは弘前を象徴するアイテム。町にはりんごのオブジェが随所に。青森ではりんごは、ただの産物ではありません。アイデンティティのような存在です。
りんごのある景色、とりわけ岩木山を望むりんご園の風景は、ここに住む人々の誇り。
北の大地で愛情豊かに育てられたりんごには、青森がこのフルーツに注ぎ続けた情熱が凝縮されています。
独立行政法人青森県産業技術センターりんご研究所独立行政法人青森県産業技術センターりんご研究所は、日本で唯一のりんご専門の試験研究機関。明治時代に起源を持つ、歴史ある研究所だ。旧庁舎は、りんご史料館として開放されている。特殊なシールを用いて作る、文字入りのりんご。果実がごく若い時期に袋で覆い、そのまま育て、10月になって袋を除いて色づけのタイミングでシールを貼る。
弘前市内の佐藤袋店の協力で、今回、エルメさんの2つのブランドのロゴ入りのりんごを作った。
●佐藤袋店
TEL:0172(32)6797