真言宗御室派総本山、仁和寺。格式ある世界遺産に宿泊すれば、早朝、諸堂を巡り勤行する僧の崇高な姿を見ることができる。広大な境内には、通常の拝観時間では体験できない、静謐な時間が流れている。特別な滞在を叶える非公開の扉の奥へ
そこに宿泊しなくては味わうことのできない、特別な世界を体験したい。
さらにそれが歴史的建造物や文化財の修復や維持に役立っているとしたら、その旅はいっそう意義深く、大きな感動を私たちにもたらしてくれるでしょう。
まずは、王朝文化の薫り漂う世界遺産に1泊100万円で宿泊し、非公開の扉の奥で唯一無二の時を過ごすそんな旅からご紹介します。
きもの、帯/創作京呉服 多かはし 帯揚げ/和小物さくら 帯締め/道明 髪飾り/かづら清老舗賀来千香子さん、皇室ゆかりの世界遺産で日本文化を堪能する
──〔真言宗御室派総本山 仁和寺〕
宇多天皇が創建、約1000年にわたり皇子皇孫が住職を務めてきた、門跡寺院の筆頭格、仁和寺。御室御所とも呼ばれる古刹が始めた文化体験プログラムを楽しむのは賀来千香子さん。
夕方5時、かつて門跡が過ごしていた御殿の「宸殿」は、宿泊者の貸切に。上段の間から3室が連なり、四季折々の貴族の風俗が描かれた襖絵に囲まれた荘厳な空間で、雅楽を鑑賞する賀来さん。
笙と篳篥(ひちりき)の奏でる神秘的な音色に心動かされるひととき。
賀来千香子(かく・ちかこ)さん1982年、テレビドラマ『白き牡丹に』で女優デビュー。以後、テレビドラマ、CM、舞台等で幅広く活躍。情報番組『あしたも晴れ! 人生レシピ』(Eテレ、金曜20時~)では司会も務める。真珠の数珠/山清堂五重塔の内部は時空を超えた曼荼羅の世界
宿泊者は僧侶の案内で非公開の伽藍を見学できる。
1644年建立、重要文化財の五重塔もその1つ。内部には大日如来を中心に五仏を配し、極彩色の曼荼羅の世界が広がる。
賀来さんは「江戸時代の気配がそのまま残っていて素晴らしいですね」と見入って。
国宝・金堂での早朝の勤行に心洗われるひととき──
早朝6時。鳥のさえずりに目を覚ましたら、国宝の金堂での勤行に参加。
読経と法具の厳かな音色が響き渡る尊い時間は、宿泊した者だけが得られる貴重な機会。
阿弥陀三尊を安置する堂内は通常非公開。京都御所より移築された現存最古の紫宸殿として、宮殿建築を今に伝える。
賀来さんと仁和寺執行の長岡さん。仁和寺にはテレビの収録で訪れたばかりという賀来さんは、「ご縁を感じますね。通常では見られない文化財の数々を丁寧に解説していただいて、とてもありがたい時間でした」。長岡さんも「文化財にご興味と敬意を持ってくださるかたをお迎えすることは、我々の喜びでもあります」。賀来さん扇子、バッグ/井澤屋仁和寺ならではの特別な文化体験の数々
仁和寺執行の長岡誠宏さんのご案内で、非公開エリアを巡る賀来さん。国宝の金堂や重要文化財の五重塔の内部のほかに、2019年秋に373年ぶりに公開された観音堂も拝観し、感無量の様子です。
翌日は仁和寺発祥の御室流生け花にチャレンジ。悠久の歴史と深遠かつ雅な文化をあますところなく堪能します。
徳川3代将軍家光の寄進により建立された五重塔の内部には、五仏のほか、壁や柱に真言八祖や菊花文様が。美しい格天井も見事。五重塔の内部「春らしい季節の花々に心癒やされますね」─賀来千香子さん
「花を生けることで、命の大切さに心を寄せるのが御室流です」─御室流華務長 小田美風さん
仁和寺門跡を家元とする御室流華道を体験する賀来さん。御室流華務長の小田美風さんに華道の極意を教わりながら、少しずつ挿していく。ゆきやなぎ、ストック、スイートピー、そしてチューリップなど、春らしい花材に季節を想う心を込めて。ブラウス11万円 スカート16万円/ともにミカコ ナカムラ(ミカコ ナカムラ 南青山サロン) リング198万円/サバース(サバース ギンザ 銀座本店)