早朝、仁和寺の表玄関である重要文化財の二王門はまだ閉ざされたまま。誰もいない寺内、諸堂を巡り勤行する僧侶とともにお参りするひとときに、格別の清々しさが漂う。文化財を支えるために世界遺産に宿泊する喜び
仁和寺の特別な宿泊施設「松林庵」に到着し、一息ついたら僧侶による案内で非公開の諸伽藍の見学に。
夜の帳が下りる頃、荘麗な「宸殿」で雅楽を聴き、精進料理を味わいます。
松林庵にチェックインし、2階でくつろぐ賀来さん。プルオーバー63万9000円/ロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ銀座並木通り本店) イヤリング7万4000円 リング30万円/ともにアルテミス・ジョイエリ ニット、パンツ/スタイリスト私物その後は境内の散策へ。御室桜で有名な仁和寺ですから、季節によっては夜桜を楽しむこともできるでしょう。
翌日は早起きして「金堂」での勤行に参加。静謐な時間を過ごしたら、仁和寺ならではの生け花に挑戦する。
松林庵の場所は宿泊者にしか公開されない。門扉から続くアプローチにも風情が。今回、賀来さんが訪ねたのは「御室御所」とも称される格式高い門跡寺院。雅やかな空間で、宮廷文化の美の数々に出会います。
そもそもこの文化体験は、仁和寺が日本財団の「いろはにほん」プロジェクトに参画したもので、非公開の歴史的建造物に滞在し、日本文化を体験するという主旨。
利用料の一部は寄付され、文化財の維持・修復に充てられるといいます。
松林庵1階。床の間のしつらいにも仁和寺らしさが漂う。季節ごとに色を変えるクッションは、植物染めで高名な「染司よしおか」製のもの。松林庵の宿泊料は1日1組限定(宿泊は5名まで)で1泊100万円。「1泊100万円と聞くと、驚くかたもいらっしゃるかもしれませんが、世界遺産を独占し、非公開エリアで唯一無二の体験ができる。世界遺産で過ごす価値や、文化を継承し支えていく意義を考えていただければ」と仁和寺執行の長岡さん。
松林庵は、江戸末期の大夫、久冨遠近守の子孫から寄贈された建物をリノベーションした数寄屋造りの一棟。2階には居室のほかに、茶室や仁和寺宝物が並ぶ展示室なども。落ち着いた和モダンな空間の中、ゆったりと心静かに過ごすことができる。今回ご紹介した内容以外に、写経や護摩はもちろん、茶道、和歌、十二単といったプログラムも。旅の内容はすべてオーダーメイドで、あらゆる文化体験が叶います。
「ほかでは決して味わえない、時空を超えた優美な世界を楽しむ旅が、文化財の保護や継承につながるのですね」と賀来さんも滞在を満喫。
単なる京都観光とは一線を画す、日本文化の未来を支える旅。京都の新たな醍醐味が、ここにあります。
松林庵1泊100万円の滞在例
1日目:14時 「松林庵」チェックイン
15時 国宝「金堂」や重要文化財「五重塔」内部などを見学
17時 御殿「宸殿」にて雅楽鑑賞(※)
18時 御殿「宸殿」にて夕食をいただく(※)
20時 寺内の夜の散策へ
2日目:6時 国宝「金堂」での朝の勤行に参加
7時 朝食
9時 御室流華道を体験(※)
11時 「松林庵」チェックアウト
(※)はオプション別料金。雅楽(奏者1名)7万円~、夕食1名1万5000円~、生け花1名5万円~
Information
真言宗御室派総本山 仁和寺
京都市右京区御室大内33
表示価格はすべて税抜きです。
撮影/森山雅智 スタイリング/おおさわ千春 きものコーディネート/相澤慶子 ヘア&メイク/重見幸江〈gem〉 着付け/川上まり子〈市田美容室〉
※宿泊には別途宿泊税がかかる場合があります。料金には別途、消費税やサービス料がかかることがあります。美術館の入館料は税込み価格です。表示されている宿泊料金はシーズンの最低料金です。料理は状況によって、一部メニューや食材、盛り付けが異なる場合があります。
『家庭画報』2020年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。