美を紡ぐ人々 パリでその実力を認められた「美を紡ぐ」日本人アーティストや職人たちとの出会いを、フランス移住2年目のライター・ルロワ河島裕子が綴ります。
連載記事一覧へ>> 美を紡ぐ人 原田江津子さん(ニットクリエイター)【前編】
取材・文/ルロワ河島裕子11区トルソー通りに構える「TAMBOUR PARIS(タンブール パリ)」のブティック。まるでジブリ映画の世界に入り込んでしまったような不思議な感覚。友人との待ち合わせ時間までの暇つぶしのつもりでふらりと立ち寄ったこのお店に、私はすっかり魅了されてしまったのです。物語を生み出すミステリアスな店構えに惹かれて
パリの街を無作為に歩いていると、物語に出てきそうな魅力的なブティックに遭遇することもしばしば。
今やおしゃれエリアとして発展目覚ましい11区マンドール地区のトルソー通りにひっそりと佇む「TAMBOUR PARIS(タンブール パリ)」は、まさに私にとって宝物を見つけたような感覚をもたらしてくれたブティックです。
「TAMBOUR PARIS」のクリエイター原田江津子さんは、パリで様々な賞を受賞。オーナーは50歳で「才能あるクリエイター賞」を受賞した日本女性
こちらは、在パリ歴32年というニットクリエイター原田江津子さんのお店。2016年50歳のとき、ジュエリーと時計の国際見本市「ビジョルカ・パリ」の、ファンタジー・ジュエリー部門で「才能あるクリエイター賞」を受賞。
その独創的でファンタジックな世界観を感じさせるクリエイションで、パリの「メルシー」や日本の「H.P.フランス」、「阪急うめだ本店」など、感度の高いセレクトショップや百貨店から注目を集めています。
デザイン性に加え、ぬくもりにあふれたニットウェア。おしゃれな母の影響を受け、ファッションの道を志す
その原田さんがファッションの道へと進んだのは、編み物教室の講師をし、当時は珍しくバリバリ働いていたお母さまの影響が大きいといいます。
数十人の生徒を抱え忙しく過ごすお母さまの姿を見て、幼い頃からかぎ針を握り、物心ついた時からニットを編んでいたという原田さん。「編むという行為は、私の人生そのもの」と語ります。
そんな原田さんも10代の頃は「母と違うことがしたい」という気持ちが強まり、障害者介護の仕事につきたいと考えていたことも。
しかし、進学の時期が近づくに連れ、やはりファッションを学びたいという思いが強まり、美術短期大学に進学。
「大学時代には学生ながら、美大生グループで大手企業のスポンサーをつけ、ラフォーレ原宿や新宿PePeなどで大規模なファッションパフォーマンスも企画・運営していました。今思うと、若くても大きなことをさせてもらえるいい時代でしたね(笑)」
さらに短期大学卒業後、フランスに本校を持つ服飾専門学校エスモードに入学。
「パリで本場のモードをこの目で見たい」という思いから、最後の1年は学校の制度を利用し、パリに留学します。