【連載】日本の医療をリードする名病院と病院長 日本の医療をリードする「名病院」の病院長に診療の特徴や方針について語っていただく連載の第2回は、160年余の歴史を誇り近代医学の黎明期から医学界を率いてきた東京大学医学部附属病院です。「世界ベストホスピタル」にも選出され、名実ともに日本の頂点に立つ病院の使命と機能を中心にお伝えします。
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“患者ファースト”で世界最高峰の臨床医学を提供
東京大学医学部附属病院 病院長
瀬戸泰之先生
東京大学医学部附属病院 病院長 消化管外科学 教授 胃・食道外科 科長
瀬戸泰之(せと・やすゆき)
1958年、秋田県生まれ。84年、東京大学医学部卒業。同年、同大学医学部第一外科入局。国立がんセンターがん専門修練医、中通総合病院副院長、がん研有明病院上部消化管担当部長などを経て、2008年に東京大学医学部消化管外科学教授に就任。19年、病院長に就任。「患者ファースト」を掲げ、専門家集団を率いる。臨床ではロボット支援手術を活用した食道がん根治術「NOVEL」などを開発した世界的外科医としても知られる。得手はあるけれど不得手はない。どのような疾患や状態にも対応
近代医学の黎明期から医学界を常にリードしてきた東京大学医学部附属病院は、日本を代表する医療機関の一つです。
在籍する1300人余りの医師はそれぞれ専門領域を持ち、日常診療においてもトップレベルの医療を提供していますが、専門病院と大きく異なるのはすべての疾患をカバーできることです。
さらに、併存疾患を抱え、複数科によるコンビネーション治療が必要な患者に安全で高度な医療を行えるのも特徴の一つです。
「得手はあるけれど、不得手はありません。総合病院である当院は、どのような疾患や状態にも対応します」と病院長の瀬戸泰之先生はいいきります。
ほかの医療機関が取り組んでいない分野では移植医療に優れた実績があります。
「心臓移植、肝臓移植、肺移植の3つの臓器移植が実施できる数少ない施設の一つです。2019年度の総移植件数は90件を超える見込みで、その数は着実に増加しています」。
11歳未満の心臓移植も得意とし、全国で4か所しかない実施医療機関の一つです。
〔小児医療センターを拡充し、未来を担う子どもの命を守る〕2019年、新生児・小児ICU病床を大幅に増床。周産期医療と連携し、最重症児の救命を目指す。写真提供/東京大学医学部附属病院2019年4月にはがんゲノム医療中核拠点病院(全国11か所)にも指定され、遺伝子情報に基づく最先端のがん個別化医療を開始しました。
また、日本発の革新的な医薬品や医療機器を開発するために設置された臨床研究中核病院(全国12か所)でもあり、研究開発機関としての役割も担います。
〔食道がん根治術「NOVEL」で、ロボット支援手術の新たな可能性を世界に向けて発信〕食道がん手術の最難点である術後肺合併症を改善するため、2012年に世界で初めてロボット支援手術を導入した「NOVEL」を開発。この手術法は世界も注目し各地で普及が進む。写真提供/東京大学医学部附属病院
「移植医療、がんゲノム医療をはじめ、さまざまな最先端医療に取り組む当院は、患者さんやご家族から“最後の砦”と思われることも少なくありません。この期待にしっかり応えられるよう、これからも臨床医学の最高峰を目指して努力していきたいと思います」。