ピロリ菌除菌治療が胃がんの発症リスクを有意に抑制する
練馬総合病院は、2010年に他院に先駆けて「ピロリ外来」を開設し、9年間で約400名の患者にピロリ菌の除菌治療を行ってきました。
その成功率は極めて高く、除菌できなかった人は数名しかいません。
また、治療薬となる抗生物質に耐性を持つピロリ菌のため通常の治療では除菌できなかった人や抗生物質に対するアレルギーがある人の除菌などにも対応し、専門性の高い除菌治療に取り組んでいます。
胃の中に生息するピロリ菌は、長い年月をかけて持続的に感染し慢性的な炎症を起こします。
そして、萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、胃MALTリンパ腫、胃過形成ポリープ、特発性血小板減少性紫斑病などの原因になることがわかっています。
これらの疾患は「ピロリ菌感染症」と呼ばれ、その発症予防にはピロリ菌の除菌治療が有効です。
「なかでも多くの人にとってのメリットは胃がんの予防です」とピロリ外来を担当する副院長で内視鏡センター長の栗原直人先生はいいます。
胃がんは日本人に最も多いがんの一種
胃がんは日本人に最も多いがんの一種です。国立がんセンターの最新がん統計では、2014年に新たにがんと診断された人のうち、胃がんだった人は男性では最も多く、女性では3番目に多い結果となっています。
「胃がんにかかった人の99パーセントはピロリ菌に感染していてピロリ菌感染者の約5~6パーセントに胃がんが発症すると考えられています。一方で、ピロリ菌の除菌治療が胃がんの発症リスクを有意に抑制することも判明しています」。
2008年に発表された日本人を対象とする大規模試験では、ピロリ菌を除菌した群は除菌しなかった群と比較すると胃がんの発症数が3分の1少なかったのです。
このような研究結果を重く受け止めた国は2013年から胃がんの温床となる慢性胃炎に対してもピロリ菌の除菌治療を保険診療で認めています。
「近年、胃がんの死亡者数は減少しており、ピロリ菌の除菌治療対策もその一助になっていると考えています」。