アトリエにて刺繍をされる草乃しずかさん。
──展覧会の最後は毎回「命」をテーマにしたタペストリーの大作を発表されていますね。
展覧会ごとに作っている「命」は今回で6回目。毎回、「今の時代にみなさんに何を伝えたらいいか」を考えて制作しています。1作目を発表したのは、10年間介護した主人の母が亡くなった後で、命の尊さや誰にでも平等に訪れる死に思いを馳せ、生きていることへの感謝を込めて曼荼羅のような作品を作りました。今回のタペストリーのタイトルは『flying-dancing-swimming』。空にはたくさんの鳥が飛び、野には蝶が舞い、海には魚が泳いでいる・・・・・・私たちも動かなくてはいけない、というメッセージを込めています。
──動くというのは、具体的にどういうことでしょうか?
今の時代、不安材料がいっぱいあるじゃないですか? 天災も人災も。地球上にたくさんの問題があるなかで、私たちはみな、じっとしていてはいけないと思うんです。気になる問題を誰かと語り合うだけでもいい、諦めないで動かないと。そのためにはまず、一人ひとりが心を動かすことではないでしょうか。
一針一針に草乃さんの思いが込められた珠玉の刺繍作品を、ぜひ会場でご覧になってください。
刺繍によって新たな命を得たカーテン「風の蝶」は、幻想的な美しさ。リメイクをテーマにした第3会場に展示予定の作品。
草乃しずか/Kusano Shizuka
日本刺繍作家
石川県生まれ。1969(昭和44)年、フランス刺繍「森山多喜子教室」に参加し、1971(昭和46)年、日本刺繍の丹羽正明氏に師事する。2000(平成12)年、展覧会「桜浪漫展」を開催(銀座・横浜)。2014(平成26)年、日本刺繍作家活動40周年の集大成として「草乃しずかの世界―祈りを込めて40年」展を開催し、好評を博す。
草乃しずか展 ─煌めく絹糸の旋律─会場:松屋銀座8階イベントスクエア(東京都中央区銀座3-6-1)
期間:2017年12月27日~2018年1月15日
10時~20時(入場は閉場の30分前まで)
※12月31日は18時閉場、1月2日は9時30分~19時30分、最終日は17時閉場。1月1日は休業。
入場料:一般1000円他
電話:03-3567-1211(松屋銀座大代表)
http://www.matsuya.com/m_ginza/event/*仙台(藤崎)、京都(美術館「えき」KYOTO)巡回予定。
取材・文/清水千佳子 写真/中村 淳