――原作の惣領冬実さんのコミックは以前からご存じだったのですか?
「この作品に携わることがわかってから読ませていただきました。僕は、実在したチェーザレ・ボルジアという人物自体も知らなかったので、資料を集めて調べたんですが、一言では説明できないくらい謎が多いんです。ボルジア家が悪く書かれている文献と、実際にはそうではなかったと書かれている文献があって、惣領先生も取材ではかなり苦労されたそうです。チェーザレはスペインの貴族の血を引く人間で、ローマからすれば、よそ者。惣領先生の漫画では、そういった対立もある中で何が真実だったのか?というところも丁寧に掘り下げられていて、すごく勉強になります」
――舞台では、コミックの1巻から10巻までの物語が描かれるそうですね。ルネサンス史上最も美しいといわれる伝説の英雄チェーザレを、どう演じたいですか?
「周りを引っ張り、巻き込んでいく力を持った、強いリーダーであるというところが、演じる上でいちばん大切になると思っています。それでいて、どこか孤独な存在であるところも。チェーザレは、別所哲也さんが演じられるローマ教皇ロドリーゴの庶子なんです。このバックボーンが、彼のコンプレックスになっていて、それが時に冷酷とも思える策略で未来を切り開く力にもなっていく。そんな人物像を、原作で描かれているチェーザレの表情や立ち姿と重ねながら、舞台上で演じられたらなと思います」
――原作ものの舞台に取り組む際、原作をどの程度意識するものですか?
「意識しないと言ったら、嘘になります。でも僕はそれ以上に、その役と巡り合った縁を大切にしたいなと思っていて。今回は明治座の方たちが、この役を僕に結びつけてくれた。それに勝るものはないんじゃないかなと。もちろん、原作があるからこそ、中川晃教を知らない方や、もしかしたらミュージカルを観たことがない方も劇場に足を運んでくださることがあるわけなので、そこはしっかり踏まえて、チェーザレと向き合います。自分としては、そのうえでプラスαの部分も見つけたい。どんな役に対しても、実感を持って演じられるところまでは成長できていると思うので」
ダンテ研究者の原 基晶氏を監修に迎え、膨大な資料を基に描かれている原作の歴史漫画は、『モーニング』(講談社)で不定期連載中。現在12巻まで出ており、累計140万部を突破している。