明るいえんじ色で描かれた蓮の間で遊ぶカメやトンボ。《生命賛歌》では、小さな生き物たちが生を謳歌するさまが描かれている。青蓮院門跡×Ki‒Yan 作
【蓮 ──青の幻想・生命賛歌 極楽浄土】
青蓮院門跡は、三千院、妙法院と並び天台宗総本山比叡山延暦寺の三門跡に数えられ、代々皇族や五摂家が住職を務めてきました。
この格式高い門跡寺院の華頂殿に新しい景色を作り出したのが、“Ki‒Yan(キーヤン)”こと木村英輝氏です。
“ロックな壁画絵師”なる異名をもつ木村氏。名だたるロックイベントをオーガナイズしてきた半生を経て、還暦を前に絵を描きだしたという異色の人です。
多彩に花を咲かせる蓮ののびやかな筆致を見てのとおり、躍動感溢れるダイナミックな作風こそ、氏の真骨頂。
岩絵具や本金といった伝統の画材ではなく、彼が選んだのはアクリル絵具でした。鮮烈な色彩が、大胆な構図とともに迫力を生み出しています。
「絵は畳に座ったときの目の高さに合わせて描かれています。ぜひ座ってご覧ください」
──青蓮院門跡 執事長 東伏見光晋さん青は慈悲を象徴する色。淡い青の蓮が揺れる襖絵は《青の幻想》と名づけられた。《極楽浄土》の名にふさわしく青、赤、黄、白、色とりどりの蓮の花が鮮やかに咲き誇る。青蓮院門跡住所:京都市東山区粟田口三条坊町69-1
TEL:075(561)2345
拝観日:通年拝観可能(春・秋に夜間ライトアップを開催、行事等により休止の場合あり)
拝観時間:9時~17時(最終受付16時30分)
URL:
http://www.shorenin.com/海外でも座禅の会を開いている山田宗正住職。日本の漫画、アニメ、ゲームの人気の高さに着目したという。襖絵の制作費の一部はクラウドファンディングによって賄われた。拝観料も寺宝の修復費に充てられる。上の北見けんいち氏作《楽園》は2018年に完成した。大徳寺 真珠庵×北見けんいち 作
【楽園】
大徳寺復興に尽力した一休宗純禅師が開いた塔頭、真珠庵。曽我蛇足(そがじゃそく)、長谷川等伯が描いた寺宝が修復に入ることになり、400年ぶりに襖絵を新調。方丈の景色は一変しました。
『釣りバカ日誌』で知られる漫画家、北見けんいち氏による《楽園》。北見氏が魅せられた与論島で、島民たちと楽しく過ごす情景が16面いっぱいに描かれています。
このほか、人気ゲームを生んだアートディレクター、上国料(かみこくりょう) 勇氏、映画監督の山賀博之氏ら6名のクリエイターが“現代の襖絵”に挑戦しました。
とんちで知られる一休さんゆかりの寺院だけに、自由な発想に驚かされます。
「襖絵は浮世絵のように時代を映す鏡であるべき。自由人、一休さんのヒューマニティを受け継いで」
──大徳寺 真珠庵 住職 山田宗正さんスーさんや浜ちゃんなど漫画の登場人物、作者や友人、今は亡き親しい人......皆が満面の笑みで宴に興じている。中央で気持ちよく歌っているのは、山田宗正住職だとか。大徳寺 真珠庵住所:京都市北区紫野大徳寺町52
TEL:075(492)4991
拝観時間:9時30分~16時
※事前に電話で「拝観希望」と予約を入れ、詳細を確認。
●京都の記事一覧はこちら>> 撮影/本誌・坂本正行 取材・文/河合映江
※宿泊には別途宿泊税がかかる場合があります。料金には別途、消費税やサービス料がかかることがあります。美術館の入館料は税込み価格です。表示されている宿泊料金はシーズンの最低料金です。料理は状況によって、一部メニューや食材、盛り付けが異なる場合があります。
『家庭画報』2020年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。