爽やかに伸び伸びプレーできる環境づくりを大切に
岡本綾子さんが、メジャー大会は「経験を積むとそれだけずっしり重くなる。あきらかに昔よりうまくなっているのに、勝とうとするとだんだん離れる難しさがある」と以前おっしゃっていました。オリンピックは4年に1回。ましてや自国開催は、一生に一度あるかないかという特別な舞台です。でも考えすぎると、その人の良さが無くなり、心技体がバラバラになってしまうので、選手たちにはあまりそういうことを意識せず、爽やかに伸び伸びプレーをしてもらいたいです。
私の話で恐縮ですが、1985年の全米女子アマで優勝したのは、初出場のときでした。直前に日本女子アマを2連覇した勢いはありましたが、初めて単身渡米して、マッチプレーも初体験。会場のフォックスチャペルGCはとても暑くて日程的にもハードだったので、プレッシャーを感じる暇もなく無我夢中でプレーしました。覚えているのは決勝36ホールの途中から、「ずっとやっていたい」という感覚があったことぐらい。対戦相手との相乗効果で、お互い良いプレーを引き出して合って、すごく心地よかったです。帰国便が成田空港に到着したらカメラマンが大勢いて、「誰がこの飛行機に乗っているんだろう?」って周りをみたら、自分が撮られていたっていう感じでした。
2019年の全英女子オープン優勝で一気に注目された渋野日向子選手。強気のプレーと共に大舞台でのスマイルも話題に。写真/AP/アフロ渋野さんが全英を勝ったときも、やっぱりあの笑顔が印象的でした。優勝のプレッシャーが掛かる中、あんなに満面の笑顔で1番ホールを出ていった。勝てちゃうときって、そういう感じなのかなって思います。オリンピックは国を背負った難しい状況にあるかと思いますが、なるべくよい雰囲気で「楽しめました!最高でした!」という若さ溢れるプレー、笑顔を心から期待しています。
取材・文/今岡涼太