京都&パリ ひみつの美味案内 世界の食都、京都&パリ。地元のグルメな方々に、現地に暮らすからこそ知っているおすすめの美味をこっそり教えていただきます。旅の計画にぜひお役立てください。
記事一覧はこちら>> 「和食 晴ル」の「すき焼き定食」。昼は、麺や丼、定食を6、7品揃える食堂風。夜は、“居酒屋以上割烹未満”の一品料理とお酒を楽しめる。【3月の美味案内】
春到来!花名所のランチ
(取材・文/西村晶子)
花ほころぶ3月は、京都の花見スポットで気軽なランチを楽しめるお店を4回にわたってご紹介します。初回に訪ねるのは、梅の名所である北野天満宮エリアです。
北野天満宮の梅。写真/ピクスタ梅は、桜のような派手さはありませんが、京都人にとっては春を告げる花。梅の名所として知られ、「天神さん」と呼び親しまれているのが、全国に約1万2000社ある天満宮、天神社の総本社、北野天満宮です。
北野天満宮の南側にひっそりと暖簾を掲げる「和食 晴ル」では、京都らしさが凝縮されたランチを楽しめます。
コシがあって柔らかな麺に、ねぎやお揚げを絡めながら味わう「九条ねぎうどん」600円。おつゆも飲み干せるおいしさ。1.京都の食材がたっぷりの、端正な熱々うどん
「和食 晴ル(わしょく はる)」は、夜は一品料理を出す割烹居酒屋です。お店はもともと烏丸の市街地にありましたが、建物の建て替えのために昨年、北野天満宮の近くに移転。仮店舗の間だけ限定で、ランチを出しています。
「九条ねぎうどん」は、大量のねぎにまずびっくり。シャキシャキとした食感を残すねぎは、香りや甘みも感じられ、甘く炊いて細く刻んだお揚げと一緒に盛られています。
お揚げは、一般的なきつねうどんのお揚げよりも優しい味つけで、地元の豆腐店「とようけ屋 山本」の油揚げを使っています。
細めの麺は、ねぎのインパクトに負けないコシのあるさぬき風。昆布や宗太節(そうだぶし)、いりこ、干ししいたけでとったしっかりとした力強いだしとお揚げのこくが、深い味わいを生んでいます。
産地よりも質にこだわって選んだ国産黒毛和牛の「すき焼き定食」2000円。肉のおいしさが際立つ優しい味つけ。2.上質な黒毛和牛と京都の食材で作る、優しい味わいの京風すき焼き
もう1品の「すき焼き定食」は、ご覧のとおりのボリュームで、こちらにも九条ねぎが。割り下の中でさっと火を入れた牛肉に、豆腐(こちらも前述のとようけ屋 山本)や糸こんにゃくを添えた、贅沢な定食です。
焼きながら砂糖や醤油をからませる関西風と違って、割り下たっぷりの牛鍋風なので、お肉はしっとりとして甘すぎず、辛すぎずの味つけ。豆腐やこんにゃくには味が染み込み、ねぎはシャキシャキ感たっぷり。濃厚な味わいの丹後の平飼い鶏の卵を絡めていただきます。
ランチはほかにも、鴨かつ丼や穴子丼などが日によって内容を替えて揃います。どれも気取らず、しかし素材や味に妥協がありません。
昼はごはんものや麺類、夜は一品料理でもてなす、店長の桔川晴年さん。夜は予約がベター。店の奥のテーブルからは庭が見え、店内は和モダンなしつらい。器は骨董を中心に、辻村 塊(つじむら・かい)さんら現代作家によるものも。インテリアも和の趣で、テーブル席からは苔生した庭が見え、ついつい長居したくなる素敵な空間です。
奥のテーブル席は骨董を飾る、落ち着いた空間。おいしさと美しさが穏やかにしみわたる。北野天満宮は境内一円に50種、約1500本の梅が咲き、1月から徐々に咲き、3月半ばまで紅梅、白梅、一重、八重が咲き競います。3月下旬まで境内の梅苑を公開しているので、梅見とランチをセットでお楽しみいただけます。
北野天満宮の斜め向かいに佇む、風情ある一軒家。京都で一番歴史のある花街・上七軒も徒歩圏内。和食 晴ル
京都府京都市上京区東今小路町758
電話 075-351-1881
営業時間 12時~14時(LO)、17時30分~21時(LO) ※金曜~日曜の夜は2部制
定休日 月曜(祝日の場合は翌火曜、ただし毎月25日は営業)
※6月に元の店舗に移転の予定、その後は夜の営業のみ。
京都の記事一覧はこちら>> 西村晶子/Shoko Nishimura
関西を拠点に、京都の食や文化、人、旅を幅広く取材、編集。長年、『家庭画報』の京都企画を担当し、さまざまな記事を執筆。最近の書籍の仕事に『
旨し、うるわし、京都ぐらし』(大原千鶴著)がある。
表示価格はすべて税別です。 撮影/内藤貞保