注目のオペラ歌手が新国立劇場に登場
藤木大地(ふじき だいち)
1980年、宮崎県出身。2012年、日本音楽コンクールで第1位に。17年、ウィーン国立歌劇場にデビュー。18年にはアルバム『愛のよろこびは』をリリース。「17年前、僕がプロとして初めて立ったのが、新国立劇場の舞台でした。当時はテノールでしたけど」と笑顔が素敵な藤木大地さん。
ウィーン国立歌劇場に、2017年春に東洋人初のカウンターテナーとしてデビューした注目のオペラ歌手が、約17年ぶりに新国立劇場に登場する。
同劇場で初上演されるヘンデルの傑作『ジュリオ・チェーザレ』に、チェーザレの敵トロメーオ役で出演するのだ。さらに秋には、同劇場のオペラ新シーズン開幕を飾るブリテン『夏の夜の夢』に出演。妖精の王オーベロン役で主演を務める。
「このタイミングで、僕がカウンターテナーにとって最も大事だと思っている役で呼んでもらえるなんて。『夏の夜の夢』は、ブリテンがアルフレッド・デラーというカウンターテナーのために書いた、おそらく歴史上初めて、カウンターテナーに主役が与えられた作品。僕が海外のオーディションで必ず1曲目に歌っていたのも、オーベロンのアリアです」
子どもの頃から歌が得意で、「褒められたことを伸ばそう」と東京藝術大学音楽学部に進学した藤木さん。ミュージカル俳優・井上芳雄さんは、高校時代から声楽コンクールで競い合った大学の同期だ。
新国立劇場オペラ研修所を修了後、ボローニャに留学。
海外の舞台に立つ道を探ったもののままならず、だったら違う人生を歩もうと、ウィーン国立音楽大学大学院で文化経営学を学んでいた10年夏に転機が訪れる。
風邪で地声が出なくなり、裏声で歌ってみたところ思いのほか好評で、カウンターテナーに転向したのだ。
「今はすごく自由に音楽がやれている」と話す彼は、『夏の夜の夢』では、英国の人気演出家デイヴィッド・マクヴィカーの「魔法のような演出」が楽しみという。
「海外で歌うようになって、変な気負いや恐れがなくなりました。このオペラがお客さまにとっても、人生の素敵な体験になったら嬉しいです」
新国立劇場2020/2021シーズンオペラ ブリテン『夏の夜の夢』〈新制作〉
『夏の夜の夢』モネ劇場公演より新国立劇場 オペラパレス2020年10月4日・6日・8日・10日・12日
S席2万7500円 ほか
ボックスオフィス:03(5352)9999
※6月20日よりチケット一般発売
公演の詳細はこちら>>指揮/マーティン・ブラビンス
演出/デイヴィッド・マクヴィカー
出演/藤木大地、シェシュティン・アヴェモ ほか
※『ジュリオ・チェーザレ』は残席僅少
表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/岡﨑 香 撮影/大靏 円
『家庭画報』2020年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。