内耳が敏感な人は天気の影響を受けやすい
愛知医科大学病院 痛みセンターは、2009年に日本初の「気象病外来・天気痛外来」を開設しました。
この専門外来を立ち上げたのは“天気痛ドクター”としてつとに知られる佐藤 純先生です。同外来においてこれまでに延べ7000人の気象病・天気痛患者の診療にあたってきました。
受診者は女性が圧倒的に多く、全体の7割を占めます。年齢層は10代から80代まで幅広いものの、中心は40歳以上の中高年女性です。
佐藤先生は、気象病の中でも天気の影響を受ける痛みを「天気痛」と名づけ、そのメカニズムを解明するための研究を続けてきました。
「ヒトの体は天気の変化、すなわち気圧の変動を受けるとストレスを感じます。すると、そのストレスに対抗するために交感神経が活発になり、血流が障害されたり筋肉の緊張が起こったりします。そして、この自律神経のバランスの乱れによってもともと体に持っていた痛みが悪化するのです」と佐藤先生は解説します。
天気痛患者が訴える症状として最も多いのは頭痛です。ただし、年をとってくると血管が硬くなるので頭痛は起こらず、その代わりにふらつきやめまいといった症状が出現してくるといいます。
「そのため、耳鼻咽喉科を受診する患者さんも少なくありません」。
また、佐藤先生の研究から天気痛になりやすいタイプもわかっています。その1つが気圧の変動を感じ取るセンサーである内耳が敏感な人です。
「新幹線や飛行機に乗ったときに耳が痛くなりやすい、乗り物酔いをしやすい、よく耳鳴りがする、耳抜きが苦手という人は内耳が敏感であることが多いです」。
さらに自律神経が不安定な人も天気の影響を受けやすい体質であるためハイリスク者となります。
「季節の変わり目に弱い、暑い季節にのぼせやすく寒い時期に冷えを感じやすい人は要注意です」。
更年期も自律神経のバランスを崩しやすいうえに、女性ホルモンの急激な減少が痛みの悪化に影響しやすいので気をつけたい要因です。
このほか、肩がこりやすい、首を痛めたことがある、大きな怪我をした経験がある、片頭痛の持病がある場合も天気痛になりやすいリスクを持っていると考えられています。