プレノワール(フランス原産黒鶏)の手羽などを煮込み、越冬じゃがいもで巻いた前菜。皮も中もピンク色をした品種「ノーザンルビー」を焼く、揚げる、マリネにするなど、多彩な調理法で提案。【アグリスケープ】(北海道・札幌市)―フランス料理
自ら育てた野菜で北国の四季を紡ぐ
「初めていらっしゃるかたは、皆さん一様に驚かれます」。そう笑顔で話すのは、シェフ・吉田夏織さん。
最寄り駅から車でわずか10分ほどの間に、住宅地を抜け、トンネルをくぐり、どんどん山間へ。この先にレストランがあるのか心配になってきた頃、シンプルでモダンな建物が見えてきます。
放牧黒豚の自家製ベーコンとクリームをポワローに詰めた前菜。ソースとトッピングには、山わさびの風味と辛み、レモンバーベナの酸味を合わせ、さらにベーコンの薫香により、ポワローの甘さがいっそう際立つ。オープンは2019年春。「自分たちで食材から手がけたい」と、その2年前から本格的に農業に着手し、自ら育てた野菜とハーブ、鶏に卵、そして山から得た恵みで、その日のコース料理を仕立てます。
飛び地で畑を持ち、養蜂、豚の飼育まで始めたという、まさに「農風景(アグリスケープ)」という店名にふさわしいレストランです。
鶏舎で180日間育成した「プレノワールの炭火焼き」。ごぼうや発酵させたきのこ、ブイヨンを煮つめたソースで。吉田シェフが大切にしているのは、素材の生命力を生かすこと。
ありふれた言葉に聞こえるかもしれませんが、たとえばじゃがいもなら、収穫したての秋と貯蔵した冬、越冬させた春とでは味わいが異なります。
春を待つ小松菜の畑にて。吉田シェフが手に持つのは、自ら育てたゲストに紹介するためのその日の食材の盛り合わせ。土に触れ、山に学び、その時々の特徴や変化を五感で感じられるように表現した料理からは、食材が秘める輝きが確かに伝わってきます。
窓の外は4月末まで雪が残る北海道ですが、食材のほとんどが自社農園産という贅沢に幸せを感じる昼膳です。
大きな窓を配したメインダイニング。家具は地元作家によるもの。AGRISCAPE(アグリスケープ)住所:北海道札幌市西区小別沢177
TEL:011(676)8445
営業時間:12時10分~13時(LO)、17時40分~19時30分(LO)
定休日:不定休
URL:
http://www.agriscape.jp/昼コース4000円、8000円、1万2000円。夜コース8000円、1万2000円。写真は昼・夜8000円の献立より。
個室2室(各4名)※要予約
表示価格は本文中に税込みと表記されているもの以外は税抜きです。
撮影/阿部 浩、大泉省吾 取材・文/鈴木博美、小西由稀
※価格には別途サービス料や個室料金がかかる場合がございます。
※特集内でご紹介した料理は、食材調達の都合で変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。
『家庭画報』2020年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。