デビュー以来、映画、ドラマ、舞台とジャンルを問わず、活躍しつづける原田美枝子さん。今作では制作・撮影・編集・監督を務めた。15歳でデビューし、日本を代表する名だたる映画監督の作品に出演する原田美枝子さん。長きにわたり、カメラの前で輝きを放ち続けてきた原田さんが一転、カメラを回す立場に。そのカメラが映すのは、原田ヒサ子さん。原田さんの母親です。認知症が進み、介護施設で暮らすヒサ子さんが体調を崩して入院したときのこと。こんなことを口にしました。「私ね、15のときから女優やってるの」。その言葉が、原田さんを映画『女優 原田ヒサ子』の制作に導きました。
——ヒサ子さんの夢を現実にしてみようと思ったことが制作のきっかけと聞いていますが、それを自身で手がけようと思ったのはなぜですか?
「母の言葉を聞いてから、どうしてそんなことを言うんだろう、どうしてそういう言葉が出てきたんだろう、なんで?っていうことを考えるようになったんですけど、もしかしたらそういう夢を持っていたのかもしれないって、初めて気がついたんです。昔は、こちらの都合を言うばかりで、母がどういう気持ちで私のそばにいたのか、どういう気持ちで私の仕事を見ていたのか、そういうことには全然思い至らず。でも、夢としてあったんだったら、それが現実になったらいいなって、思ったんです。1カット撮って公開したら、既成事実ができるじゃないかと。
それは人に頼むより、自分で作ったほうがいいだろうし、それを私の子供たちが手伝うことに意味があると思ったんです。育ててもらった恩返しじゃないけど、生まれたときから抱っこしておんぶして育ててくれた母に対して、私たちができることをやるっていうのは、とても意味があると思ったんです」