——「今からでも私にできることがあるんじゃないか」という映画の中の言葉が印象的でした。
「映画の最後に、母を故郷の海に連れていきたいなと思って、撮影の1週間前に一人でロケハンに行ったんですよ。そのときに、母の義理のお姉さんに会って母の兄弟のことを聞いたら、“2人は小さいときになくなってるから10人って言ってるけど本当は12人で、13人目のお産でお母さんは死んだんだよ”っていう話をしてくれたんです。そのときに44歳で13人目の子供のお産で亡くなったっていうのを知って、子供を10人くらい産むのが普通の時代があったんだなとか、44歳で13番目のお産で亡くなるって、どのくらい苦しいんだろうって、リアルに実感したんです。
私の母は戦争があって好きなことができなかった。その母は子供をたくさん産んで、育てるのが仕事みたいな時代だったと思うんですよね。だから、何かやりたいとかっていうところではなかっただろう。でも、やってみたいことがあったかもしれないですよね。そういう女の人の歴史が連綿とあって今の自分があって、好きなことをしているっていうことに気がついたというか……。母が“15のときから女優やってるの”って言われなければ、母の若い頃の写真も一生懸命見なかったし、母の母のことだってそんなに一生懸命考えなかった。そういうことに触れられて、今回の映画を作って本当によかったし、観てくださる方が10代でも20代でも30代でも40代でも、きっと何か感じるところはあると思います」
「母のすぐ上のお姉さんに、最後になるかもしれないけど、会わせておきたい」という思いもあって、ヒサ子さんの故郷の海を訪れた。
