――そのマタ・ハリを、日本版では元宝塚歌劇団のカリスマトップスター、柚希礼音さんが演じます。
「役柄にピッタリだと思います。柚希さんとは、ポスター用のビジュアル撮影で初めてお会いしたんですが、宝塚(歌劇団)で多くの人を魅了してきた方ならではの人を惹きつける魅力や謎めいた美しさみたいなものを感じました。それでいて、撮影が済んで緊張が解けると、可愛らしい女の子の表情にパッと変わるので、このギャップはズルいなと(笑)。マタ・ハリとして、きっと劇中でも色々な表情を見せるのだろうなと思います。一緒にお芝居できるのがすごく楽しみですし、早くその魅力に惑わされてみたいですね(笑)」
――加藤さんは、マタ・ハリの運命を変える2人の男、フランス諜報局の大佐ラドゥーとその部下のアルマンを、回替わりで演じられるとか?
「はい。年齢も離れた対照的な2役をつくり込んで演じ分けることに、とてもやりがいを感じています。もちろん、プレッシャーもありますし、年齢的にも中堅どころにきている自分が、いかにフレッシュさを取り戻して、若く純粋なアルマンを演じるかという課題もありますが(笑)。大人の男の色気があり、自分でも気づかないうちにマタ・ハリへの情熱を膨らませていくラドゥーとのメリハリをうまくつけられたら、この2役の演じ分けは面白いだろうなと感じています。ラドゥーとアルマンが一緒に歌うナンバーでは、ちょっと不思議な気分になりそうですが(笑)、そこも含めて楽しみです」
180㎝を超す長身の持ち主。中学・高校時代はバスケットボール部に所属、高校では部長を務めたそう。
――とても素敵な声をお持ちの加藤さん。昔から歌は得意だったのですか?
「歌うことは好きで、ちょうどカラオケが流行っていたこともあって、中学生の頃から友達みんなでよく歌いに行ってはいました。でも特別、歌が得意なわけではなかったですね。よく親父の声と間違えられたりして、昔は自分の声があまり好きではなかったですし」
――それが、歌手としてメジャーデビューして2年後に武道館で単独ライブを開催、いまや帝国劇場でミュージカルの主役も務める存在です。
「人生、本当にわからないものですよね(笑)。これも色々な人との出会いに恵まれたお陰。その一つひとつが結びつき、積み重なって、今に至っているのだなと思います。僕はもともと人と接するのがあまり得意ではなくて、今思うと、昔はオーディションに行っても自己PRがろくにできずに、ちょっとおどおどしていました。インタビューを受けるのも本当に苦手で、できれば喋りたくないと思っていましたし(笑)。それが変わったのは、音楽をやり始めて、チームの人たちと意見を交わしながら一緒にライブをつくるようになってから。“人って、そんなに怖いものじゃない”“話して自分を知ってもらうことも、表現の一つなんだ”と気づいたことが大きいと思います」