娘の成長を共に見守るはずの妻がいない。撮影はつらいし、大変だった
役を演じるにあたっては、「健一としてその場に立って、その場で起きたことを、そのままストレートに受け止める。あとは、常に(亡くなった)妻を思い描いて、向き合っていました」と話す山田さん。そうして役に向かう山田さんは、「すごくしんどそうでした」と飯塚監督は言います。
「そりゃそうですよね。だって、これからっていうときじゃないですか。結婚して子供が生まれて、その子の成長を一緒に、喧嘩したりとかいろんなことがありながらも育てていくんだと思ったタイミングで先立たれているので。その気持ちのまま1か月撮影しているわけですよね。もちろん、人に助けられて、っていうのはあるけど、でも……。妻がいない。
それがあって、一番向き合わなきゃいけないのは娘なんだけど、娘は年齢をどんどん重ねていくと自分よりも友達とのつきあいが大切になっていったりして。向き合わなきゃいけないのに向き合ってくれないし、ある程度の距離をとったほうがいいんだろうかって父は娘に対して思ってるわけじゃないですか。ホントだったら、妻とそういうことも共有しながら悩んで、どうしていこうかって話し合って……とやりたかったのにできないことが一番つらいし、大変でした」
妻の死去1年後から始まる物語。「1年だし、切り替えなきゃって。切り替えられないまま1年、過ごしてたからそう思うんですよね」