王室伝来の図譜を「写す」細緻な描写
芸術的な植物画と暮らす
「フローラ ダニカ 230周年記念 望 野点小箪笥」に含まれている「フローラ ダニカ」のプレート。このように精緻かつ生き生きとした花を描けるようになるまでには10年以上かかるという。植物大図鑑の原画に忠実に描くのが基本だが、ペインターへのリスペクトから、細かい部分は描き手の裁量に任されている。そのため、同じ植物画でも〝根〟が描かれているものといないものがあるなど、一枚一枚がまさに世界に一つのユニークピース!「ロイヤル コペンハーゲン」の歴史が幕を開けたのは、1775年。国内産業の支援に熱心だったジュリアン マリー皇太后が、デンマーク王室御用達製陶所として開窯しました。以来、240年以上にわたり、「ブルーフルーテッド」をはじめとする優美なテーブルウェアで人々を魅了しています。
デンマーク王室の命で18世紀に120年以上かけて作られた手彩色銅版画の図譜『フローラ ダニカ』。自国の植物画約3000点が載っている。その名窯が香川漆芸とのコラボレーションに選んだのは、今年、発表から230周年となる「フローラ ダニカ」です。同名の植物大図鑑の花を忠実に描き、24金の金彩を贅沢に施し、7回以上の焼成を経て完成を見る器は、ため息が出るほどの美しさ。優れたクラフツマンシップと美意識が光る、デンマーク随一の伝統工芸品です。もともと、デンマークの製陶技術や国土の豊かさを他国に知らしめる目的で制作されたシリーズで、歴史的にも高い価値を有しているのも特徴。最初に制作されたうちの現存する1530点は国宝としてコペンハーゲンのローゼンボー城に所蔵されています。
植物大図鑑の原画を見ながら作画をする「フローラ ダニカ」のペインター。それぞれ自分用にカスタマイズした道具を使っている点は香川漆芸の作家と同じ。国宝となった最初のディナーサービスは、植物大図鑑の作画にも携わった絵師、バイエルが一人で手がけましたが、現在は14名の熟練したペインターが花の絵と金彩に分かれて担当。使いやすいように各自が毛先をカットしたテンの毛の筆で、花の棘や極小のドットまで細微に描写します。歴代のクラフツマンが大切に継承し、21世紀の今も王室主催の晩餐会のテーブルを彩っている「フローラ ダニカ」。その芸術的な植物画を写した名品を、暮らしに取り入れてみませんか。
左・ティーポットの蓋などを彩る小さな装飾品の数々は、すべて細かい指先の作業から生み出される。キャリア30年、40年のベテランが多い仕事だが、最近、若いクラフツマンも加わったのだそう。優れた技は確実に受け継がれていく。
右・器の裏には植物の学名(ラテン語)がカリグラフィーで美しく記される。