天平文様の大根、三輪そうめん、カリフラワーのスープの、美しく味わい深い煮物椀。【白(つくも)】(奈良市)─日本料理
天平文化への憧憬を一汁三菜に込めて
「嵐山吉兆」で10年間研鑽を積んだ後、軽井沢でそば、ニューヨークで精進料理、ロンドンで和食の経験を重ね、日本最古の都・奈良で店を始めて5年。
店主・西原理人(まさと)さんはこの地に根を下ろした意図を、「奈良はさまざまな文化の起源がある町。長い歴史の中に息づく神秘や空気を感じ取りながら、料理を掘り下げていきたい」と語ります。
奈良の歴史をテーマにした八寸。飛鳥の白い卵で作った茶碗蒸しに、東塔の水煙に見立てた宇陀金ごぼうの素揚げを添え、山城の焼き筍など旬の魚介や野菜を盛り合わせに。名店で培った技と海外で培った感性で大和の食材を独創性豊かな料理に昇華させ、昼は月替わりの一汁三菜を提供しています。この春は薬師寺東塔落慶法要と日本書紀編纂1300年にちなんで「天平」をテーマに構成。
先付八寸は日本最古の柑橘とされる大和橘、薬師寺境内の梅、古代のチーズの一種の蘇など、いわれのある大和の素材がさりげなく使われています。
主菜は大和牛のステーキ丼、海老と野菜天丼、大和牛しぐれご飯、手打ちそばから選べる。色鮮やかな煮物椀は天平の色と桜に仕立てた大根をカリフラワーの白いスープで引き立て、ステーキ丼は自家製ソースや十七味、揚げたビーツを添え、どれも斬新にして心に染み入るおいしさです。
大粒で甘い奈良産苺「古都華(ことか)」、白餡に酒粕を忍ばせた桜餅。NYの「嘉日(かじつ)」やロンドンの「UMU」での6年を経て、“真行草”の“行”のもてなしを目指す西原さん。白(つくも)住所:奈良市三条町606-2 南側1階
TEL:0742(22)9707
営業時間:12時~13時、17時30分~20時
定休日:月曜、月の最終日、火曜の昼、毎月1日の昼
URL:
http://tsukumonara.com/昼一汁三菜5000円。夜コース1万2000円。写真は昼の献立より(大和牛のステーキ丼は+1000円)
※要予約
「#和食」の記事一覧はこちら 「嵐山吉兆」の「吉」の字は、正しくは「土」の下に「口」です。 表示価格はすべて税抜きです。
撮影/内藤貞保(69、108~109ページ) 取材・文/西村晶子
※価格には別途サービス料や個室料金がかかる場合がございます。
※特集内でご紹介した料理は、食材調達の都合で変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。
『家庭画報』2020年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。