研究や臨床応用には患者・家族を交えた議論を
松原さんは、現状では、ゲノム編集された子どもの子孫への影響が予測できず、後戻りができないことから臨床応用には慎重であるべきと語ります。
「かつては飢餓に対応できるのに役立っていた遺伝子が飽食の時代には糖尿病や肥満を引き起こす要因になるように、今、私たちがよいと思っている人間の資質が将来、地球環境が大きく変化したときなどに弱点となる可能性もあります。ゲノムは将来に引き継がれます。今の価値観でゲノムを編集することが本当にいいのかどうか」と松原さん。
医師・研究者としては「目の前の患者さんやご家族を助けたい。ゲノム編集は大きな福音となる可能性があるのですから、研究は推進すべきだと思います。ただし、ゲノムの専門家が関与し、患者さんやご家族を交えた議論が必要です。
病気によっては出生前診断や着床前診断(受精卵の選別)によって防げるケースもあるので、こちらの研究や臨床応用、倫理的な検討も進めるべきでしょう。同時に、“病気や障害があるのが自然な社会の姿”と人々が考えること、難病患者さんや障害のある人、その家族へのサポートがさらに充実していくことも求められます」と話しています。